1995 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙期の哲学史を対象に異文化対話と理性の構造転換との関連を解明する総合的研究
Project/Area Number |
07801008
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
寺田 元一 名古屋市立大学, 教養部, 助教授 (90188681)
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Keywords | 啓蒙, / 自由思想 / 地下文学 / 哲学史 / 異文化コミュニケーション / 宗教批判 / 批評的博識 / 理性 |
Research Abstract |
当初の研究計画で挙げた(1)、(2)、(3)について考察を行った。(1)のベールの『歴史批評辞典』に関わっては、次のような知見を得ることができた。それがとりわけオランダにおける複雑な宗教対立、なかでもユグノ-とソツィニ派との対立の産物であること。しかも、その対立が、オランダというある程度言論の自由が保障された社会で、定期刊行物、辞典、文庫といった批評的博識に依拠したジャーナリズム的知の形態において、かつてないほど自由かつ広範に展開されたこと。それゆえ、ベールの『辞典』のみならず、種々の雑誌や文庫は、論争的なだけでなく、ギリシャ・ローマの異教的古代の知をはじめ、エジプト、メソポタミア、インド、中国、日本の知、17世紀の新科学の知見、キリスト教の教義や聖書、歴史をめぐる知見などを含み、知の複雑な対立と飽和の宇宙となっていたこと。『辞典』はそうした「情報化社会」への数多くの知的介入の一つ、ユグノ-の信仰主義の介入だったこと。そして、ベールから啓蒙哲学史への展開は直線的なものでなく、信仰主義が啓蒙の理性主義の武器庫となるという逆説的なものであったこと。 (2)については、ブルッカー『哲学史』ラテン語原本とエンフィールドの英語抄訳をノートを取りつつ並行して読み進めている。(3)については、一橋大学での西洋社会科学古典資料講習会での講演で総合的な紹介を行うことを通じて、概観を得ることができた。 しかし、全体に(2)ディドロを中心とする「折衷主義」、(3)フランス地下文学の全体像については、野沢研究会への参加や関係論文発表によって認識を深めることができたが、予定通りの成果を挙げるには至らなかった。
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