1996 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙期の哲学史を対象に異文化対話と理性の構造転換との関連を解明する総合的研究
Project/Area Number |
07801008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
寺田 元一 名古屋市立大学, 人文社会学部, 助教授 (90188681)
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Keywords | 哲学史 / 人間精神史 / 理性 / 異文化 / 啓蒙 / フランス / 18世紀 |
Research Abstract |
当初予定していたとおり、(1)「ヨーロッパ精神の危機の時代」の考証学の代表作であるベール『歴史批評辞典』を現在考察中であるが、何せ大部の著作であるため、論文化するには至っていない。この作業と並行して、ベール専門家の野沢協氏(駒沢大学)が主催する研究会(17世紀末から18世紀前半の反キリスト教的な地下文書を検討)に出席し、研究の指導助言、情報、資料提供を受け、地下文書についての認識を深めた。その成果は、日本フランス語フランス文学会の秋季大会(96年11月03日、名古屋大学)での研究発表「『ゴ-チエの夢』-忘れられた18世紀創発主義唯物論-」や、『名古屋市立大学人文社会学部紀要』(創刊号、1996)所収のギヨ-ム・ラミ『解剖論』他の「書評」において公表した。 (2)ディドロの〈哲学史〉の検討についてはまだ端緒についたばかりであり、今年度は成果らしいものを挙げるに至らなかった。来年度の課題としたい。 (3)自由思想・批評的博識の思潮が、「他者」(異端・異教・異文化・異民族)に開かれた新たな空間をいかに伐り拓いていったかを、名大所蔵の「18世紀自由思想コレクション」や「言語哲学コレクション」を利用して考察する件については、(1)で触れたゴ-チエと関連して、イギリスの自由思想家ト-ランドやコリンズについて検討を行い、啓蒙の哲学史記述の背景にある問題の認識を深めることができた。 (4)それ以外の哲学史については、昨年末から本年初めにかけてフランスのパリで集中的にラングレ=デュフレノワの『ヘルメス哲学史』(1742)をめぐって調査を行い、その成果がまもなく『名古屋市立大学人文社会学部紀要』(第二号、1997)に論文として掲載されることになっている。
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