1997 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙期の哲学史を対象に異文化対話と理性の構造転換との関連を解明する総合的研究
Project/Area Number |
07801008
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
寺田 元一 名古屋市立大学, 人文社会学部, 助教授 (90188681)
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Keywords | 哲学史 / 人間精神史 / 理性 / 異文化 / 啓蒙 / フランス / 18世紀 / 自由思想 |
Research Abstract |
(1)ベール『歴史批評辞典』について検討を継続しているが、大部の著作であるため、18世紀哲学史記述に対してそれが演じた役割など、まだ考察が不十分なままにとどまっている。この作業と平行して、引き続き、ベールの権威、野沢協氏(駒沢大学)主催の研究会(17世紀末から18世紀前半の反キリスト教的な地下文書を検討)に出席し、研究の指導助言;情報、資料提供を受け、地下文書についての認識を深めた。その成果は、『唯物論研究年誌』(青木書店)第二号(1997年)所収の「17世紀百科全書主義(汎智)から18世紀『百科全書』(編集知)へ」や<<Le medecin Gaultier et le courant cache du materialisme emergentiste du XVIIIe siecle>>(Etudes de langue et litterature frangaises,no.72所収)となって結実した。 (2)ブルッカー『批判的哲学史』(ラテン語)と、その一部のフランス語への自由訳からなるディドロの<哲学史>とについては、語学的な困難もあって、研究が遅れている。今後の課題としたい。 (3)自由思想・批評的博識の思潮が、「他者」(異端・異教・異文化・異民族)に開かれた新たな空間をいかに伐り拓いたかという問題については、ト-ランドやコリンズといったイギリスの自由思想家などを中心に、引き続き考察をすすめている。 (4)哲学史といえば、ヘーゲルが近代的な意味での創始者とされているが、そのヘーゲル『哲学史講座』との関係を中心に、<啓蒙哲学史>の歴史的意義を研究成果報告書で明確にした。また、それとのからみで、ドイツ観念論に対するフランス啓蒙の歴史的ならびに現代的意義・独自性を考察した。 (5)以上の考察ならびにこれまでの研究を踏まえ、「フランス18世紀前半における哲学史記述‐‐‐‐異文化対話と理性の変容の視角から‐‐‐‐」と題して、本研究の課題の前半部にとどまるとはいえ、研究成果報告書をまとめることができた。
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[Publications] 寺田 元一: "17世紀百科全書主義(汎智)から18世紀『百科全書』(編集知)へ" 唯物論研究年誌. 2. 278-310 (1997)
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[Publications] TERADA, Motoichi: "Le medecin gaultier et le courant cache du materialisme emergentiste du XVIILe siecle" Etudes de langue et litterature frangaises. 72(発表予定のため未定). (1998)