1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07801021
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
豊田 弘司 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (90217571)
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Keywords | 記憶 / 発達 / 活性化 |
Research Abstract |
本研究の目的は記憶の発達が活性化領域の限定によって規定されているという仮説を検討することであった。本年度は、小学2年、6年及び大学生を被験者として、偶発記憶手続きを用いた個別実験を行った。方向づけ課題では被験者は記銘語が枠組み文に適合するか否かをできるだけ速く「はい」「いいえ」で判断するように求められた。この後、挿入課題、偶発自由再生テスト、再認テストの順に実施した。方向づけ課題での枠組み文には、交換不可能文(ex.きりん の くび は -。)と交換可能文(この ひも は -。)が用いられた。記銘語(ex.ながい)に対して交換不可能文は、記銘語からの連想語(みじかい)と入れ替えると意味が通らないので、記銘語に対する意味的限定性が強い。一方、交換可能文は連想語と入れ替えても意味が通るので記銘語に対する意味的限定性は弱いと考えられる。もし、被験者が枠組み文の文脈をとらえて符号化していると、記銘語から連想語に対する活性化の拡がりは、交換不可能文よりも交換可能文で多くなる。それ故、交換不可能文を枠組み文とする方が、交換不可能文を枠組み文とする場合よりも記銘語の活性化水準が低下、偶発記憶成績が低下するだろう。また、交換不可能文では連想語に対する虚再認率が交換可能文のそれよりも意味的限定性のために低くなるであろうと予想された。実験の結果、小学2年では交換不可能文と可能文の間に偶発再生率及び虚再認率の間に差はなかた。小学6年生では、統計的に有意には至らなかったが予想とほぼ一致する結果が得られ、大学生では、予想と一致する結果が得られた。この結果は、上記の仮説を支持する結果として解釈された。 なお、上記実験の他に、記銘語の品詞と異なる品詞の情報を提示することによる統語的限定性に関する補足実験を3つ行った。
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