1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07801021
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
豊田 弘司 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (90217571)
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Keywords | 偶発記憶 / 自由再生 / 活性化領域 / 統語的限定 / 反意連想 |
Research Abstract |
実験1では、大学生を被験者として、偶発記憶手続きを用いた集団実験を行った。被験者には、記銘語(名詞)と対呈示語の連想関係の強さを評定させる方向づけ課題を与えた。対呈示語には、記銘語からの連想名詞、連想形容詞、非連盟名詞及び非連想形容詞を用いた。結果は、対呈示語が連想語でも非連想語でも、記銘語(名詞)に形容詞を対呈示する場合が名詞を対呈示する場合よりも自由再生率が高かった。対呈示語の品詞による統語的限定の効果が非連想語においても認められたことを示すものであった。 実験2では、同じく偶発記憶手続きを用いて、記銘語に比喩形容詞を対呈示する場合(記銘語「声」に対して「甘い」)及び連想形容詞を対呈示する場合(記銘語「人」に対して「優しい」)における記銘語の自由再生率の比較を行った。その結果、前者の場合よりも後者の場合の方が記銘語の自由再生率の高いことが示された。この結果は、後者の場合には記銘語と形容詞間が1つの概念を形成し、記銘語からの活性化が拡散しにくいが、前者の場合には記銘語からの活性化拡散及び形容詞からの活性化拡散が生じ、記銘語事態の活性化水準が低下するためと考察された。 実験3及び4では、大学生を被験者として、記銘語に対して反意連想形容詞を対呈示する場合とそれ以外の連想形容詞を対呈示する場合の自由再生率を比較した。偶発記憶手続きを用いた実験3においては前者と後者間に自由再生率の差はなかった。一方、意図記憶手続きを用いた実験4では、前者が後者よりも自由再生率が高かった。この結果は、大学生では、記銘の意図がある場合には、記銘語と反意連想形容詞を含む領域に活性化領域を限定できる可能性のあることが示唆された。 最後に、平成7〜9年度に行った14の実験をまとめて、報告書(冊子)を作成した。
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