1995 Fiscal Year Annual Research Report
「民俗」と思考-知覚・感情・価値の内在化におけるフォークロアの認知に果たす機能-
Project/Area Number |
07801044
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩本 通弥 東京大学, 教養学部, 助教授 (60192506)
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Keywords | 子ども / 内在化 / 自然観 / 六部殺し / 村落空間 / メンタルマップ / フォークロア / 語り |
Research Abstract |
3年計画の初年度であるため、未だ纏める段階にはなく、今年度行った調査の概要(新潟県佐渡相川町と同岩船郡山北町の二地点)を、箇条書き的に記しておく。 (1)「六部殺し譚」の収集:上記の二地点では、一つの象徴的なフォクロアである「六部殺し譚」が、観念・意味のレベルでは全く別な形で受容されている。山北町では他言を禁じる人間関係のもつれや因縁話として暗く語られるのに対し、佐渡相川ではそうした禁制もなく全くの笑い話と化しているが、この事例の収集に努めた。 (2)小学生の手描きムラ地図の収集:地元の小学生のメンタルマップの収集と分析を進めている。ここから彼らの村落空間や自然観を析出し、またその内在化のデータに供する予定であるが、現段階での凡その傾向をいえば、個別に特定しているのは商店と友達の家だけであり、ほかには普段の遊び場と思われる小屋(納屋や舟小屋)のみが記される。海側に関しての認識は詳しいのに対し、山側は全く記されていない傾向があった。 (3)子どもの置かれた環境とその変貌:今回、試みる方法は、子どもたちをインフォーマントするが、ムラにおける子どもの置かれた(社会)環境とその変貌に関しても、資料調査を並行した。子どもの数の激減、地域の小学校の統廃合、農業(家内労働)・村落生活における子供の存在・役割の変化などである。 (4)マスメディアの浸透と情報源の変質:上記(3)と関連し、ここ10年来の子どもの社会環境の激変は予想を遥かに超えていた。子どもたちの会話や語りの傾向をみてみると、地元のことより、テレビやファミコンの話題が圧倒的である。当初の目標からズレが生じるのは否めないが、マスメディアの村落生活への浸透とその影響も考慮されねばならず、社会や文化の摂取や認知の在り方も、こうした社会環境の変質を前提として捉えてたい。
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