1995 Fiscal Year Annual Research Report
マニラの中国人移民社会の変容と中国系ヌスティーソの興隆、1750年-1820年-スペイン領インディアスの中のフィリピン植民地社会経済史-
Project/Area Number |
07801050
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | College of Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
菅谷 成子 名古屋女子大学短期大学部, 助教授 (90202126)
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Keywords | フィリピン / 中国系メスティーソ / 華僑 / 華人 / インディアス |
Research Abstract |
本研究は、3年計画で進めているが、本年度は初年度ということで、16世紀後葉から18世紀中葉に至るまでの時期について、マニラを中心とした中国人民社会の実態、それと密接に関連する福建-マニラ間の中国帆船貿易の動向、スペイン領インディアスの統治政策の一環としてのフィリピン政庁の対中国人政策に関する資・史料を調査収集し、検討を加えることを主とした。特に、スペイン領インディアスの統治の基本となった『インディアス法令集』やスペイン宣教師によるLabor evangelica等の関連部分を収集して、その分析を試みた。その結果、中国人移民に対しても、当初より、カトリシズムの普及がはかられたが、それは、どちらかというと、中国進出への足掛りとしての側面をもつものであったが、時代が下って中国進出の可能性が小さくなるにつれて、フィリピン諸島住民としての中国人移民という捉え方がなされるようになったことが明らかになった。 また、本研究成果の一部を講座世界史第1巻『世界史とは何か-多元的世界の接触の転機-』(東京大学出版会)に「フィリピンとメキシコ」として発表した。ここでは、スペイン領インディアスの主要部をなしたヌエバ・エスパーニャ副王領、すなわち、メキシコとフィリピン諸島との関係が、マニラ-アカプルコ間のガレオン貿易を軸として、政治・経済・財政面にわたって、多様に展開されたことを具体的に示した。特に、マニラ・ガレオン貿易の成否が、マニラの中国人移民社会の性格を左右しただけではなく、フィリピン政庁の植民地統治政策の決定をも左右し、結果として、18世紀中葉以降の中国系メスティーソの興隆をもたらしたことを指摘した。
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