1995 Fiscal Year Annual Research Report
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07801061
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
田代 真 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (90221382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 幹郎 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60185874)
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Keywords | メロドラマ / 映画 / ヴィクトリア朝演劇 / 感傷小説 |
Research Abstract |
一般にすれ違いと必然性を欠いた安易な結末に特徴づけられるメロドラマという物語形態は、各時代の支配的表象メディアにのって、各物語媒体(小説,演劇,映画)を横断してきた。とりわけ今世紀には、映画という物語媒体をつうじて、新しい物語ジャンルの生成と大衆文化の想像力の形成の原動力として、この物語媒体にとどまらない支配的、普遍的な世界認識方法として機能するに至っている。本研究では、従来の悲劇を規範とした文学研究からはともすれば取りこぼされてしまいがちであったこのメロドラマに着目し、この物語形態の構造と歴史を、文化史的、社会史的な文脈のなかで明らかにすることをめざした。具体的には、1.この物語形態の集約たる20年代〜50年代のハリウッド映画という物語媒体におけるメロドラマの生成と構造を、(1)個別ジャンルにおけるメロドラマ的要素、(2)ジャンル間の混淆とメロドラマの横断性、(3)映画産業のイデオロギーと観客の受容の歴史的形態の心理社会学的調査の分析によって明らかにし、翻って2.メロドラマ映画とその歴史的先行形態としてのオペラの比較分析を媒介として系譜学的に遡行し、3.(1)19世紀英国ヴィクトリア朝演劇におけるメロドラマ構造と観客に対する舞台効果の関連性および(2)18世紀イギリス感傷小説の発展過程におけるメロドラマ構造と語りの多元性におけるジャンルのカ-ニバレスクの関連性を探った。上述の分析によって、メロドラマの横断性とは、神学と非民主的イデオロギーを背景に発達した悲劇のジャンル的な固定性に対して、封建体制の終焉とブルジョワ階級の台頭という社会的道徳的価値的変動に対応する神なき時代の民主的イデオロギーとして、この物語形態に特有のジャンル混淆の原理に基づいて、各時代の多様な民衆的想像力の要請に答えつつ同時にそれを形成した、流動性(可塑性)のあらわれにほかならないことが明らかになった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 田代 真: "1930年アメリカ映画と検閲の成立" 帯広畜産大学人文社会科学論集. 9-2. 93-115 (1995)
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[Publications] 加藤幹郎: "映画館と観客の歴史-映画都市京都の戦後" 映画学. 第55号. 44-58 (1995)
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[Publications] 加藤幹郎: "表象問題としてのホロコースト" みすず. 第420号(印刷中). (1996)
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[Publications] 加藤幹郎: "西部劇の構造と歴史" みすず. 第411号. 62-75 (1995)
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[Publications] 加藤幹郎: "亡命作家フリッツ・ラング" みすず. 第408号. 38-52 (1995)
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[Publications] 日本マラマッド協会編・田代 真他著: "アメリカ短編小説を読み直す「猫と固有名詞-ポール・ボウルズのキティを読もう(田代)" 北星堂(印刷中), (1996)
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[Publications] 加藤幹郎: "夢の分け前" ジャストシステム, 237 (1995)