1996 Fiscal Year Annual Research Report
民衆大学にみるロシア民族のナショナル・アイデンティティの形成史に関する研究
Project/Area Number |
07801071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
坂内 徳明 一橋大学, 言語社会研究科, 教授 (00126369)
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Keywords | ナショナル・アイデンティティ / ロシア的 / ロシア文化 / 民衆文学 / 民衆イメージ / インテリゲンツィヤ / フォークカルチュア / ロシア民族という言説 |
Research Abstract |
本研究の目的は,現在のロシアの大きな混迷と危機の原因を,18世紀半ば以降の近代ロシア社会の形成・成立の時期にまでさかのぼって,その転換期における特に民衆レベルを中心とした文化とメンタリテイの基礎構造の解明によって明らかにすることにあった。そのための具体的作業としてあげてきたのは,1)18世紀前半におけるロシア,ル-シという概念,ならびにナショナル・アイデンテイテイ意識の点検[ピョ-トル改革と近代化における「ロシア文化」の全体像の把握,ロシア最初の歴史家・地理学者・民族誌家のタチ-シチェフの仕事の意味の考察などを通して],2)18世紀後半から19世紀初頭における「文学」の諸相と特徴,ならびにロシア・アイデンテイテイの形成過程の検討[民衆文学・大衆文学・世俗文学・都市文学などといったジャンルの「誕生」とそれらのテクストのチェック,「非文学」的ジャンルとしての日記・書簡・回想・家庭アルバム・アネクド-ト・スピーチなどの言語文化史的意義,民衆版画・版画本に描かれた民衆・庶民のイメージの点検と分析などを通して],3)18世紀後半から末までのロシア・インテリゲンツイアの「誕生」の意味とロシア・アイデンテイテイの関連の考察[ニヴィコフ、カラムジン,ラジ-シチェフらの民衆文学・フォークカルチュアにたいするアプローチの分析などを通して]の3点である。このなかで,3)の特にラジ-シチェフに関しては平成7年度の成果として発表ずみであるが,2)に関して,民衆版画・版画本や風俗画をはじめとする同時代のヴィジュアルな資料に登場した民衆・庶民のイメージに点検の成果は近く論文として発表の予定である。さらに,1)〜3)とは別に,現代の特に1980年代初頭からペレストロイカ期を経て90年代初頭までの時期につき,ロシア・アイデンテイテイの捉え直しの過程を民俗学研究の学史的側面から検討した成果を発表すべく現在その準備中である。(793字)
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Research Products
(1 results)