1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07802002
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
岡村 忠生 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30183768)
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Keywords | 独立当事者間基準 / 移転価格税制 / 租税優遇 / 定式分配 / ユニタリー課税 / 知的財産権 / 無形資産 / 国際課税 |
Research Abstract |
無形資産の国際移転が課税上問題となる最も重要な理由は、費用と収益の時間的なミスマッチと地理的なミスマッチが競合し、無形資産に係る所得が歪曲されることにある。すなわち、特に特許権等の知的財産権が国際課税において問題とされる典型的なパターンは、国内において支出の即時償却等の租税優遇を享受しながらその形成が行われた後、国外に移転され、課税権の及ばない収益が発生するというものであるが、そこでは、即時償却等による時間的なミスマッチと、費用の所得の発生地が異なるという地理的なミスマッチが競合しているのである。こうした問題に対して、移転価格税制による対処が試みられてきたが、その実際の方法は、独立当事者間基準に基づいた無形資産の国際移転時の評価を行うのではなく、無形資産の移転を否認し、または、無形資産に係る収益や費用控除の帰属を変更するのである。1986年アメリカの税制改革が導入したスーパー・ロイヤリティー条項も、その一例である。こうした課税方法が採られる理由は、もちろん、無形資産の評価やその所在地(所有者や所得源泉地)の確定が困難または不可能だからである。 こうした移転価格税制の執行方法は、アメリカにおける現物出質や現物配当に関する課税繰延べの乱用を規制するために、古くから行われてきたものである。課税繰延べ取引に対する移転価格税制の適用は、独立当事者間基準に基づいた通常取引に対する適用とは異なり、選択的規制である。すなわち、通常取引では独立当事者間価格をはずれる取引は全て規制の対象となるが、課税繰延べ取引では、ミスマッチが課税繰延べを認めた法律の許容する範囲にあれば適用を受けない。許容範囲かどうかを判定する基準として、ミスマッチの競合の程度や享受する租税優遇の量が重要である。
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