1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07802005
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
土田 和博 静岡大学, 人文学部, 教授 (60163820)
|
Keywords | 市場不可譲性 / 不完全な商品化 / 私的財産関係 / 代替可能財産関係 / 社会的基本財 / 平等な自由の原理 / 公正な機会均等原理 / 格差原理 |
Research Abstract |
1.Badin理論 M.J.Radinの理論は、現在までのところ、市場不可譲性理論と財産の人格理論から成り立っている。前者は、人格性とコミュニティの維持・発展という理由によって、物、役務、権利、属性などの自由な取引に一定の限定と加えようとする理論と考えられる。すなわち、人の政治的見解、仕事、宗教、家族、愛情、性、友情、利他主義、経験、英知、道徳的コミットメント、性格および身体的属性などの自我構成的なものは、市場取引を禁止又は制限されねばならないとするのである(市場不可譲性、不完全な商品化)。そこに政府規制の意義が認められる。こうした自我構成的なものは、住居、仕事、食料、環境、教育、通信、健康、身体的完全性、性、家族生活、政治生活においても最も容易に見出しうる非市場的側面の一つを形成するものであって、財産の人格理論でいう私的財産(personal property)関係にあたる。この理論は、私的財産関係が貨幣との交換以外には意味を持たない代替可能財産関係よりも、エンタイトルメント(権利・利益を享受する資格)において強いと考えるべきであり、現に裁判所や立法府は黙示的にではあれ、そうしつつあるという。 2.Rawls正義論 J.Rawlsの『正義論』は、政治的自由などの社会的基本財を平等に分配し、その後に機会、所得、富などは公正な機会均等の原理と格差原理に従って分配するという正義の2原理がその核心にある。Rawlsは、市場経済を効率性、職業選択の自由、平等な自由と機会の公正な均等、経済的権力の分権化いった理由である程度評価しつつ、しかし、正義の2原理を満足させるためには政府は、配分部門、安定部門、移転部門、分配部門、交換部門が必要であるとする。Rawlsは正義にかなった制度については、必ずしも十分な分析を行っているとはいえず、他の文献による検討が必要と思われる。
|
Research Products
(2 results)