1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07803005
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 正広 一橋大学, 経済研究所, 助教授 (80178772)
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Keywords | 国勢調査 / 統計調査史 / マイクロ・データ |
Research Abstract |
1 本研究では、わが国における第1回国勢調査(1920=大正9年)の際に、広島県が「予習調査」と称して、実際の調査に用いられたものと全く同じ個票を印刷、調査直前に全県ですべての住民に記入させていた事実に着目し、県下各市町村におけるこの個票資料の残存状況を調査すると共に、可能な範囲でその収集も行うことを目的とした。 2 調査は、以下のようにして実施された。 第一に、旧安芸郡に属するすべての市町村に対し、電話による資料所在の問い合わせを行った。 第二に、広島県立文書館に所蔵されている、旧広島県史による市町村行政資料所在調査の記録(昭和40年代中頃)を、同館のご厚意により閲覧できたので、このなかから関係資料の有無をチェックし、全県域にわたる調査の第一着手とした。 第三に、こうした調査の中で資料の所在が明らかになった地点のうち、旧深名郡山野村(現福山市)に関して、試験的に現地調査を実施した。 以上の調査の結果、次のようなことが明らかになった。 第一に、福山市、神辺町など、県内15以上の市町村に、国勢調査もしくは工場票、会社票、農業基本調査、戸数割賦課のための所得調査など、各種の個票類や、調査の実施過程が判明する行政文書が保存されていた。 第二に、山野村にて試験的な現地調査を実施した結果、同村には、大正9年の国勢調査の個票こそ発見されなかったが、第2回目の大調査年である昭和5年の国勢調査に際して、広島県が実施した予習調査の記入済み個票、戸数割所得調査薄(複数年次)、工場票、農業基本調査の個票(複数年次)などが、ほぼ完全な形で保存されていることが判明した。これらは、いずれも資料的価値の高いものであるが、特に昭和5年国勢調査の予習調査は、原爆によって県の行政資料が破壊されたためもあり、これまでその存在すら知られていなかったものである。また、特定の地域においてではあるが、複数の調査の個票が、ほぼ同一の調査対象について利用できることの資料論的、経済学的意義は、きわめて大きいものといえる。 第三に、山野村資料の一部に関しては、マイクロフィルムによって資料を入手した。
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