1995 Fiscal Year Annual Research Report
ビニリデン金属錯体を鍵中間体とする触媒的有機合成反応に関する研究
Project/Area Number |
07805082
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大江 浩一 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90213636)
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Keywords | エンジイン / Bergmun環化 / Myers環化 / ビニリデン錯体 / 1,4-有機ロジウムジラジカル |
Research Abstract |
近年、エンジインを骨格の一部に含んでいる抗腫瘍性抗生物質の発見によりエンジインの化学が活発に研究されている。これらの化合物の生理活性の発現には、環状エンジイン部分の環化芳香族化が関与している。これらの環化様式は、エンジインのBergman環化と、エンインアレンのMyers環化の2種類に大別される。歪みのかかった環状エンジインを除いて非環式エンジインの環化芳香族化にはかなりの高温を必要とするが、エンインアレンは温和な条件下で環化反応が進行することが知られている。 本研究では、エンインアレンの容易な環化芳香族反応に着目し、アレン部分をビニリデン錯体に置換した反応を設計した。その結果、非環式エンジインの興味深い触媒的環化反応が進行することを見出した。 1,5-ドデカジイン-3-エン(0.4mmol)とRhCl(i-Pr_3P)_2(0.02mmol)をトリエチルアミン(0.6mmol)共存在下、ベンゼン(4mL)中50℃で20時間反応させると1-フェニル-2-ヘキセン(E/Z=86/14)が単離収率58%で得られた。種々の検討を行った結果、生成物を高収率で得るためにはトリエチルアミンを添加することが必須であった。さらに種々の基質を用いてこの反応の一般性を調べた結果、いずれの基質からも環化によって生成するベンゼン環の結合した炭素から数えて2, 3位に二重結合を有する化合物が単離収率50〜65%で得られることが明らかになった。 本環化反応では、非環式エンジインとロジウム錯体からまずビニリデン錯体が生成し、続いてMyers型の環化が起こり、1,4-有機ロジウムジラジカル中間体が生成すると考えられる。さらに、側鎖のアルキル基からベンゼノイドラジカルへの分子内1,5-水素移動の後、ラジカル同士の結合によりメタラサイクル中間体が生成し、β-水素脱離を経て還元的脱離により生成物が得られると類推した。アセチレン末端を重水素化したエンジインの反応において、メタ位が重水素化された生成物が得られたことからこのビニリデンロジウム錯体経由の反応機構の妥当性が示された。また、ジラジカル中間体の介在は、アクリル酸エチルを共存させた反応においてアクリル酸エチルの付加体の生成により確認された。
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