1995 Fiscal Year Annual Research Report
魚類遊泳運動の基盤となる中枢内神経機構の発達過程に関する研究
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07806027
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
植松 一眞 広島大学, 生物生産学部, 教授 (00116542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 将之 広島大学, 生物生産学部, 講師 (70253119)
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Keywords | エンゼルフィッシュ / 個体発生 / 遊泳運動 / 運動ニューロン / 運動リズム / 吸引電極 / HRP / 樹状突起 |
Research Abstract |
1.孵化後8日目までのエンゼルフィッシュPterophyllum scalareの仔魚を実験材料とした。孵化後4日目までの仔魚は基質に粘液腺により付着し、自発的および減光により誘起される誘発的な尾振りを行った。5日目には基質を離れ、6日目からは遊泳と摂餌を開始した。仔魚の行動を顕微鏡高速ビデオカメラにより記録した。2日目までの運動のリズムには遅速2パターンが見られた。いずれも有効な波状運動とはみなせない。その後、低頻度のリズムは消失し、6日目以降は約12Hzがピークになるとともに、明らかな波状運動が発現した。 2.仔魚を神経筋遮断剤クラ-レ処理により不動化した後、肛門付近の皮膚を剥離することにより体側筋を露出する。先端径20〜30μmのガラス吸引電極の先端を筋節と筋節の間の筋隔に当てながら、末梢に分布する軸策から運動ニューロン活動を記録した。減光刺激あるいは機械的刺激を与えると、間欠的なニューロン活動(バースト)が観察された。バーストのリズムは行動観察から算定した運動リズムの頻度と一致した。 3.仔魚の体側筋に傷を付け、そこにHRPを微量注入することにより、当該部位を支配する脊髄内運動ニューロンを標識した。孵化時から脊髄分節あたり12〜20個の大形で細長いニューロンが標識された。以後、これらは成長しながら背側に移動したものの、数は増えなかった。時期と位置から見て、これらは一次運動ニューロンである。孵化日の後半から、より腹側の領域に小型の二次運動ニューロンが現れ、その数は3日目まで急増し、40〜50個に達した。両ニューロンとも成長とともに樹状突起を外側に向けて発達させた。 4.以上より、仔魚の運動様式が変化する背景には、脊髄内運動ニューロンの種類の増加、数の増加、介在ニューロンとのシナプス結合の場である樹状突起の発達などのあることが推察される。孵化後数日の間に、成魚型の安定した効率的な運動リズムを作り出すことのできる脊髄内神経回路が完成するのであろう。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Masayuki, Yoshida: "Developmental changes in the swimming behavior and underlying motoneuron activity in the larval angelfish, Pterophyllum scalare" Zoological Science. 13(2)(印刷中). (1996)