1995 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性および陸性低温殺菌の発育とアデノシンリン酸に関する研究
Project/Area Number |
07806028
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森井 秀昭 長崎大学, 水産学部, 教授 (60039724)
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Keywords | 低温細菌 / 生育 / アデノシンリン酸 |
Research Abstract |
低温環境で特定の生物だけがよく生長できる機構はまだ解明されていない。とくに、核酸や核酸関連物質に関する研究はほとんど見られない。この理由の1つとして、迅速で正確な分析方法が確立していないことにある。そこでまず、核酸関連物質のうち、とくにエネルギー代謝に重要な役割りを演じるアデノシンリン酸(ATP・ADP・AMP)の分析方法について検討し、分析方法を確立した。 次に、海洋性および陸性の低温性Pseudomonasを用い、最適生育温度をしらべた結果、海洋性Pseudomonasではすべての供試菌が25℃以下に、また陸性Pseudomonasでは25℃以下および以上に最適温度をもった。また陸性Pseudomonasでは、25℃以下および以上での最適温度で、生育傾向を異にした。 25℃以下に最適温度をもつ菌株(グループI型菌)ではAMP、ADP、ATPが認められ、またその含有量はAMP>ADP>ATPの順となっていた。一方、25℃以上に最適温度をもつ菌株(グループII型菌)ではADPとATPはほとんど認められず、AMPだけが確認された。これまで、生物細胞ではAMPはほとんど存在しないとされていた結果とは異なった。 グループI型菌とII型菌では生育にともなうアデノシンリン酸の消長を異にし、I型菌ではAMP、ADP、ATPとも死滅期以降でもその量を減じず、II型菌ではAMPは死滅期で急減し、遂には消滅した。これらの結果はI型菌とII型菌が遺伝的に異なることと示唆するとともに、低温細菌の低温下での生育とエネルギー代謝には関連があることを推察させた。
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