1996 Fiscal Year Annual Research Report
網膜組織形成時におけるムスカリン受容体及びATP受容体によるCa^<2+>動員
Project/Area Number |
07807006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 勝幸 大阪大学, 医学部, 助教授 (20183121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森際 克子 大阪大学, 医学部, 助手 (00273665)
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Keywords | カルシウムイオン / 網膜 / 発生 / プリノセプター / 鶏胚 / 蛍光 / アデノシンミリン酸 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
成体の神経系では、アセチルコリンとATPは神経伝達物質として作用することが知られているが、発生過程の未分化な細胞や増殖期の細胞に対しては、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を引き起こすことが報告されている。細胞内Caイオンは細胞増殖、細胞分化及び形態形成に重要な役割を果たすとされており、アセチルコリンとATPによる細胞内Ca^<2+>濃度上昇が、発生過程の細胞に特異的な応答である可能性が考えられる。しかしこれまで、神経系・非神経系を問わず、アセチルコリンとATPによるCa^<2+>応答の発生過程に伴う変化を系統的に調べた研究はない。 本年度の研究では、ATPによる細胞内Ca^<2+>濃度上昇の発生過程における変化を解析した。細胞分裂、細胞分化及びシナプス形成などの発生過程が明確にされている鶏胚の網膜神経層を用い、その灌流標本にCa^<2+>感受性色素fura-2AMを負荷して細胞内Ca^<2+>濃度を蛍光側光にした。その結果、ATPによる細胞内Ca^<2+>濃度上昇は、発生の初期(孵卵3日目)で最も顕著に生じるが、細胞増殖が終了するまで、(孵卵7-12日目)に激減し、シナプスが形成される(孵卵14日目)以前に痕跡的となることを明らかにした。この事実は、発生初期の網膜神経層細胞では、ATPが細胞内Caイオン濃度を調節することで、細胞増殖や細胞分化を制御する細胞間のメッセンジャーとして機能している可能性を示唆するものである。さらに、発生初期でのATPによるCa^<2+>濃度上昇は、細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>放出により生じ、Ca^<2+>応答の薬理学的性質からP_<2U>プリノセプターがこの応答に関与していることを明らかにした。P_<2U>プリセプターを介するCa^<2+>濃度上昇の細胞内メカニズムは、非神経細胞にも共通すると考えられ、この点は細胞生理学的に重要な所見である。
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