1995 Fiscal Year Annual Research Report
胸腺発がんのリスク因子としてのマクロファージの加齢変化:年齢依存性と遺伝的要因
Project/Area Number |
07807048
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
島田 義也 放射線医学総合研究所, 生物影響研究部, 主任研究官 (10201550)
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Keywords | 腫瘍壊死因子 / 老化 / マクロファージ / 胸腺リンパ腫 |
Research Abstract |
マクロファージは、感染防御や創傷治療などの生体の恒常性の維持を司る重要な細胞である。癌の発生においても、活性酸素や種々のサイトカインや増殖因子を産生し、イニシエーションやプロモーションの過程に関与していると考えられている。一方、癌の発生率は、遺伝的要因や年齢要因によって大きく規定されている。そこで、胸腺リンパ腫に着目し、まず放射線によって誘発される胸腺リンパ腫の年齢依存性を明かにし、それにおけるマクロファージの関与について検討することを2種類の系統のマウスを用いて始めた。 B6C3F1マウス:生後5日齢、4週齢、6ケ月齢の雌マウスに胸腺リンパ腫発生のプロトコルである1.7GyのX線を1週間おきに4回照射した。生後5日の新生児マウスは、放射線によって照射1ケ月あたりから貧血で死亡した。4週齢、6ケ月の被ばくマウスの発がん率は、それぞれ60%と13%で明かに加齢の進んだ群で低かった。放射線による胸腺リンパ腫発生は、発がんの年齢依存性のモデルとなる。フローサイトメーターの予備的な解析結果では、加齢マウスの胸腺細胞の数は減っているが、構成する胸腺リンパ球には質的な違いは認められなかった。今後、加齢に伴う発がん感受性の低下の原因を、胸腺内マクロファージと標的細胞である胸腺リンパ細胞、そして骨髄幹細胞の性質の違いを比較検討していきたい。今年度は特に、胸腺内マクロファージの単離法を確立し、加齢に伴う変化を既に報告した腹腔マクロファージ、肺胸マクロファージ、骨髄マクロファージと比較したい。また、照射後の機能を調べる予定である。 scid-CB17マウス:8週齢のscidマウスは、1Gyの一回照射で、80%以上の発がん率を示した。CB17やB6C3F1マウスでは、10%以下の発がん率しか観察されない。scid-CB17マウスの高い発がん率とマクロファージ機能の関係を調べる予定である。
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[Publications] Kubota, Y.: "Reduced fidelity of DNA synthesis in cell extracts from chemically induced primary thymic lymphomas of mice." Cancer Research. 55. 3777-3780 (1995)
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[Publications] Shimada, Y.: "Heterogeneous aging of macrophage-lineage cells in the capacity for TNF production and self rebewal in C57BL/6 mice." Mechanisms of Ageing and Development. (in press). (1996)
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[Publications] 東本有司: "肺胸マクロファージ機能に及ぼす老化の影響についての検討" 呼吸. 14. 547-552 (1995)