1995 Fiscal Year Annual Research Report
小児てんかんにおける知的退行の発現機序に関する研究
Project/Area Number |
07807075
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大塚 頌子 岡山大学, 医学部, 助教授 (10213779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 勝弘 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (60273984)
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Keywords | 小児てんかん / 脳波分析 / 睡眠 / 非痙攣性てんかん重積状態 / 知的退行 |
Research Abstract |
小児てんかんによる知的退行の中でも、脳波上睡眠中ほぼ連続的な広汎性棘徐波の出現する極めて難治な非痙攣性てんかん重積状態は重要である。これが全般てんかんの一次性両側同期か、部分てんかんが二次性両側同期をきたしたものかの鑑別は、治療上重要であるがこれまでは極めて困難であった。一次性および二次性両側同期の鑑別のためのコンピュータによる脳波上の棘徐波のコヒーレンス・位相分析には以前より高速フーリエ変換に基づく方法があったが、これでは分析に長い脳波データが必要という欠点があった。我々が新たに開発した独自の自己回帰モデルに基づくコヒーレンス・位相分析では短い脳波でも信頼性のある分析が可能であり、てんかんの病態生理の解明のために一層有用と考えられる。 当該年度においては、この型の非痙攣性てんかん重積状態を示す3名の小児例につき、一見両側同期性の棘徐波群発の部分を選び、上記分析方法により両側大脳半球間の微小時間差を推計した。これにより、3例共に棘徐波において9ミリ秒以上の時間差(12.0〜26.5ミリ秒、平均20.3ミリ秒)が存在することを明らかにし得た。この知見よりこれら3例においては、このてんかん重積状態が部分てんかんの2次性両側同期に基づくものであることを推論した。 上記の分析方法が、この型の非痙攣性てんかん重積状態においても応用可能であることが確認出来た点は、当初の計画通りの成果である。また一見両側同期性の棘徐波群発の起始部から終末部まで通して、両側大脳半球間の微小時間差が持続することが明らかとなり、これによりこの特異な非痙攣性てんかん重積状態の病態生理において、脳梁が重要な役割を演じることが示された。この知見は学術的にも、臨床的にも重要である。今後このてんかん病型の病態生理を一層解明するとともに合理的治療方針の確立をし、これによる知的退行の防止に資せしめたいと考える。
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