Research Abstract |
生体用金属材料として注目されているチタン及びチタン合金は,歯科の分野においても研究が盛んに行われており,すでに実用化されているものもある。合金化されていないチタンは,一般的に変形しやすく歯科用としては十分な力学的性質を持っているとは言い難い。そこで,チタンを合金化することを検討し,チタンとジルコニウムに注目し,その両者からなる二元合金,及び第三元素としてニオブを添加したTi-Zr-Nb三元合金の力学的性質について,熱処理と組織に注目し検討した。ジルコニウムはチタンと同様の化学的 物理的性質を有することが知られており,またニオブについても生体への影響を報告する例がほとんど見られていないことから,両元素を選んだ。合金は,チタンとジルコニウムを原子比で等量含み,ニオブを添加したTi-Zr-Nb三元合金とした。凝固組織ではデンドライトが大きく成長しているため,均質化熱処理を行い,冷間圧延したものを試験片とした。こうして作製した試験片を時効熱処理を行い,圧延面に垂直な縦断面の硬さ試験,光顕組織観察し,熱処理と組織の関係ならびに硬さに及ぼす影響について検討した。 チタン-ジルコニウム二元合金の結果を元に,チタンとジルコニウムの原子比が1:1となる組成を基本組成とし,それにニオブを添加した合金を作製し,力学的性質,熱処理の影響について検討した。その結果,ニオブの添加量が4%までと8%以降の合金では,異なる組織が見られ,その間の組成になんらかの境界が存在することがわかった。また,硬さにおいてもニオブが4%の方が硬さの値が高く,ニオブが8%以降では硬さは減少した。溶体化処理後,水焼入れしたものも,均質化熱処理材と同様,ニオブ添加量4%と8%以降の組織状態は異なるものであった。X線回折の結果からも同様な結果が得られた。 チタンを合金化することによって,強化することができることはわかった。さらに,均質化熱処理,溶体化熱処理による合金の強化にも成功した。今後は,これらの結果を考慮して合金の実用化を目指していく。
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