1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07831002
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
和田 俊 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (00089830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 茂 東京水産大学, 水産学部, 教授 (10017056)
渡部 徳子 東京水産大学, 水産学部, 教授 (40092382)
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Keywords | 考古学 / 化学分析 / エルカ酸 / 脂肪酸組成 |
Research Abstract |
考古遺物中の残存有機物を化学分析すれば理化学情報を加味した有用な知見を考古学にフィードバックさせることが出来る。遺跡有機物試料中には、酸化分解を経ても微量の脂質が残っている。本研究ではこの脂質に焦点を当てた。横浜市総持寺に保存されているネパールあるいは中国伝来と言われる香油壺中の内壁に固形物のあることが発見された。そこで、壺の内壁に付着していた有機固形物から残存脂質を抽質し、分離・同定した。この際、酸化劣化の進んだ有機固形物から不純物を除去し、脂質を抽出することは容易ではないので、このための前処理法についてはあらかじめ検討した。さらに、香油壺の原料として推定される各種天然油についても詳細に検討した。 その結果、脂質の脂肪酸組成中になたね油に特徴的なエルカ酸を含んでいることが判明した。現在、なたね油は世界各国で品種改良が進んでいるので、品種改良前の中国産なたね油を入手して分析し、これが、壺の有機物中の油と同一のものであることを突き止めた。このことより、壺は中国伝来のものである可能性の大であることを推察した。なお、不純物の精製処理には、シリカ系天然多孔質鉱物を吸着剤として用いることでそれらの除去に成功した。今後この手法により、各種遺跡中に発見される有機固形物から脂質を抽出し、分析を進めると同時に、その年代測定および動植物の判定も行う予定でいる。
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