1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07831008
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Research Institution | Tohoku University of Art & Design |
Principal Investigator |
松田 泰典 東北芸術工科大学, 芸術学部, 助教授 (70254836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 全彦 国立西洋美術館学芸課保存係, 研究員 (60265204)
小松 博 真珠科学研究所, 所長
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Keywords | 真珠 / 螺鈿 / 劣化 / 玉虫 / 分光分析 / 環境(要因) |
Research Abstract |
本年度の研究では、真珠および螺鈿の光彩のメカニズムと類似性をもつ玉虫翅に注目し、1)キセノン光の長期間照射による劣化促進試験、2)物理的力を加える圧着試験、3)脱色剤への浸漬による反応試験、4)含有成分の分析などを通じて比較検討した。その結果、真珠および螺鈿と同様に、玉虫翅でも発色は色素に由来する実態色とキチン質の積層構造に由来する構造色に大別でき、これらが化学的、物理的損傷を与えられると色彩に変化(すなわち劣化現象)が生じることが明らかになった。1)、2)、3)では試験前後における分光反射スペクトル分析をおこない、スペクトル・ピークの短波長領域への移動やスペクトル形状の変化が観測された。また、4)では蛍光X線分析により含有金属成分の試験前後の分析を実施し、色彩に金属成分の関与が示唆された。 一方、劣化状態の調査方法の検討として、螺鈿用殻体のキセノン光長期間照射による劣化促進試験をおこない、前後における分光反射スペクトル分析、分光蛍光分析などの諸方法を検討した。その結果、両方法が光エネルギーによる劣化現象の調査に適合していることが明らかになった。 さらに、寒冷地における螺鈿装飾品の保存についての基礎情報を収集するために、山形県内の豪雪地帯の環境測定を実施した。対象として、山林に周囲をかこまれた寺院の建造物を選び、1年間にわたって内外の温度・湿度を一定時間間隔で計測した。また水分の出入や凍結・融解による殻体の不透明化現象についても考察した。
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