1995 Fiscal Year Annual Research Report
出土木材の保存処理における基礎的研究-薬剤の化学吸着を中心として-
Project/Area Number |
07831016
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
植田 直見 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (10193806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大国 万希子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (40250352)
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (70223279)
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Keywords | セルロース / リグニン / 吸着 / 陽イオン界面活性剤 / 非イオン界面活性剤 / PEG / 樹種 / 劣化度 |
Research Abstract |
木材の主成分であるセルロース・リグニンに吸着する薬剤として陽イオン界面活性剤以外に陰イオン界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンモノエステル,ポリオキシエチレンモノエーテル)、無機塩類(酢酸アンモニウム、塩化ナトリウム)、糖類(ショ糖、マンニトール)、水溶性高分子化合物(PEG)などを検討した。リグニンについては、非イオン界面活性剤に吸着が認められた。また、セルロースについては、PEGおよび非イオン界面活性剤で量的にはわずかであるが吸着を示した。しかし、それ以外に吸着する薬剤は見いだすことができなかった。そこで、当初の水系だけでなくエタノール中での吸着性も同時に検討した(薬剤として高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級アルコール類、アミン類を使用)。その結果、陽イオン界面活性剤以外に有機酸、PEG、非イオン界面活性剤がセルロースに対して吸着することが認められた。 そこで、吸着する薬剤について、その濃度(1、3、5%)、浸漬温度(20℃、60℃)を変え吸着量を測定した。その結果、吸着量は濃度によっては変化せず一定値をとり温度が高くなるほど吸着量は減少することが判った。それ以外に吸着モル数は薬剤により異なることからその分子の形状や大きさにも影響すると考えた。 次に、樹種(マツ・アカガシ・ヤマザクラ・クス)・劣化度(含水率がそれぞれ300〜400%・600〜800%)の異なる出土材について水系での吸着量を測定した。その結果、同一樹脂毎ではそれぞれ含水率が高くなるほど陽イオンおよび陰イオン界面活性剤の吸着量は増加し、反対にPEGの吸着量は減少した。これは木材分析より得られたセルロース・リグニンの増減と相関するが樹種、薬剤によりその絶対量は異なった。
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