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1996 Fiscal Year Annual Research Report

化学合成による一次生産を利用する底生生物が沿岸域の有機汚泥中に生息する可能性

Research Project

Project/Area Number 07836012
Research InstitutionPREFECTURAL UNIVERSITY OF KUMAMOTO

Principal Investigator

堤 裕昭  熊本県立大学, 生活科学部, 助教授 (50197737)

KeywordsCapitella / 硫化水素 / 化学合成
Research Abstract

地球の生態系を支える有機物の一次生産は、従来より葉緑素を持った生物が行う光合成のみによると考えられてきたが、1970年代後半に、光合成が不可能な深海底の熱水鉱床周辺において、多量の生物群集が発見された。これらの生物群は、地熱の作用で発生する硫化水素を利用して硫黄細菌が化学合成を行い、その有機物一次生産によって支えられていることが判明した。この発見より、地球の生態系を支えるメカニズムに新たな一次生産手段が付け加えられた。
本研究においては、同様な化学合成による有機物の一次生産に依存する生物群が深海底のみならず、硫化水素の発生する場所においては、従来考えられてきたよりもはるかに不偏的に存在するのではないかという仮説のもとに、浅海域の有機汚泥中で有機物の嫌気的な分解によって発生する高レベルの硫化水素が、硫黄細菌による化学合成を促し、それを海産無脊椎動物が利用しうる可能性について研究を行った。この研究で注目した種は、世界各地の有機汚泥中に生息する多毛類の1種、イトゴカイ(Capitella sp.1)である。この研究で行った飼育実験においては、飼育の基質となる泥の有機物レベルが低く、この種が正常な成長を遂げるためには十分な栄養が得られない条件下でも、硫化水素のみを泥に添加し、硫黄細菌による化学合成を促すことによって、この種が正常な成長を遂げることができるようになることを確認した。また、この成長したイトゴカイと基質の泥の中の有機物に含まれる炭素の安定同位体元素比の解析から、イトゴカイが化学合成由来の有機物を利用して成長したことを裏付ける結果を得ることができた。硫化水素を実験系に供給して化学合成を促し、その有機物で実際に海産無脊椎動物を飼育に成功した例は過去に全く知られていない。この研究成果は、海産無脊椎動物による化学合成由来の有機物の利用に関する今後の研究を展開していく上で貴重な情報をもたらすものである。

URL: 

Published: 1999-03-08   Modified: 2016-04-21  

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