Research Abstract |
平成7年度は,有歯顎者群ならびに総義歯装着者群を被検者とし,それぞれの群の咀嚼運動時におけるRPの記録としてその電位成分の確立に重点を置いた.その結果, 1.咬筋筋電図を全波整流積分し,その立ち上がりでトリガー信号を出し,咬みしめ動作(閉口運動)を行わせたところ,咬筋の活動に0.8〜1.5秒先行して陰性変動(RP)が認められ,次第に増加して,筋放電の開始直前で最大となった. 2. RPはC3, C4, T3, T4のいずれにおいても認められたが,とくに側頭部であるT3, T4において高振幅な電位が得られた. 3.咀嚼運動時のRPは,各スロークずつ5秒程度の間隔をあけ,50回の試行を繰り返すことにより陰性変動を認め,咬筋活動の0.9〜1.6秒程度先行していた.しかし,その電位は前述の閉口運動時に比較して小さく,緩徐であった. 4.総義歯装着者の咀嚼運動時のRPは,有歯顎者と比較して電位が小さく,またその成分同定が困難な場合が多かった. 以上のことから,咬みしめ時におけるRP電位の確立がなされた.しかし咀嚼運動時においては,咀嚼運動自体を1ストロークずつ区切って行わせることから,咀嚼の進行に伴うリズム性が途切れ,かつ筋放電量が一定しないことが窺われた.さらにoff-line解析における平均加算に際しては符号化加算を行うこととしたものの,有歯顎者ならびに総義歯装着者それぞれに対応した加算を行うに際して,トリガー信号となる咀嚼筋活動の電位が異なることから,独自のコンピュータソフトウェアの開発が困難であった.そこで平成8年度は,咀嚼ストロークの間隔を2秒程度に短縮した上で,加算回数を30回程度に低減し,コンピュータソフトウェアの改善を行って,それぞれの群における可及的多数例の集積から,咀嚼運動時におけるRPの記録とその電位成分の確立を図っていきたい.
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