1995 Fiscal Year Annual Research Report
来談行動の規定因研究:カウンセラ-の言語・非言語の不一致と来談者の不安の効果について
Project/Area Number |
07851009
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
織田 信男 岩手大学, 保健管理センター, 講師 (80250645)
|
Keywords | 特性不安 / 状態不安 / 来談意図 / 共感 / verbal behavior / non-verbal behavior |
Research Abstract |
先行研究によると、カウンセラ-のクライエントに対するコミュニケーションにおいて言語優位条件(+V-NV)と非言語優位条件(-V+NV)を比較すると、結果が一致しなかった。すなわち、カウンセラ-への来談意図や共感評定において、言語優位条件よりも非言語優位条件の評定値が高い結果(+V-NV<-V+NV)と逆に非言語優位条件よりも言語優位条件の評定値が高い結果(-V+NV<+V-NV)といった相反する結果が得られている。結果が一致しない理由として、被験者の不安状態の相違を要因と考え、本研究ではカウンセラ-の印象評定に及ぼす言語・非言語行動不一致要因(言語優位・非言語優位)と被験者の不安要因(高・低)は交互作用を示すという作業仮説を検討した。すなわち、高不安者は低不安者に比べて情報処理が容易な非言語優位条件において、来談意図や印象評定が大きな影響を受けるであろう。一方、低不安者は高不安者に比べて情報処理がより困難な言語優位条件において、来談意図や印象評定が大きな影響を受けるであろう。 本研究では、不安要因に特性不安尺度と状態不安尺度の2種類の尺度を使用したが、結果は特性不安尺度では来談意図において交互作用が統計的に有意な傾向であったが、状態不安尺度ではより強い交互作用が来談意図や紹介意図評定において得られた。すなわち、低不安者は高不安者に比べて非言語優位条件において来談意図や紹介意図を高く評定したが、言語優位条件では低不安者と高不安者との間に有為な差が認められなかった。これは仮説とは異なる交互作用であるが、この結果は、高不安者は言語優位条件と非言語優位条件のどちらにおいても、言い換えれば、言語行動と非言語行動のどちらか一方が否定的行動である場合には、来談意図を低く評定することを示す。一方、低不安者は言語優位条件よりも非言語優位条件において来談意図や紹介意図を高く評定したことを示す。この結果は第60回日本心理学会で発表される。
|