1995 Fiscal Year Annual Research Report
有機セレン化合物における特異な水素結合のキャラクタリゼーション
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07854034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩岡 道夫 東京大学, 教養学部, 助手 (30221097)
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Keywords | セレン / 水素結合 / 超原子価 / 軌道相互作用 / 同位体効果 |
Research Abstract |
C_-H…Se水素結合の特異性(構造上の特徴および化学的性質)を明らかにし,有機セレンの酸化還元特性におけるその役割について新しい知見を得ることを目的として,2種のモデル化合物を合成した。8員環状の新規化合物6H, 12H-ジベンゾ[b, f][1, 5]ジセレノシンにおいては既に,C_-H…Se水素結合が存在することを報告したが(J. Am. Chem. Soc. 116. 4463 (1994).),今年度はこの化合物の重水素置換体を合成し,同位体効果の側面からC_-H…Se水素結合の特異性を考察した。赤外スペクトルにおいてC-D伸縮振動の短波数シフトがC-H伸縮振動の短波数シフトよりも大きく減少したこと,セレンのNMRスペクトルにおいて正(高磁場側へ)の同位体シフトが観測されたことにより,セレンと水素の間に引力的な相互作用,すなわち水素結合が存在することがより明確となった(Bull. Chem. Soc. Jpn.投稿中)。分子軌道計算によると,C_-H…Se水素結合のエネルギーは約1kaclと小さく,普通の水素結合に比べ軌道相互作用の寄与が重要であることがわかった。この結果は,セレンと水素の間に約30Hzという大きなスピンカップリングが観測された実験事実と一致している。第2のモデル化合物としては,非環式の化合物における分子内および分子間C_-…Se水素結合について検討するために,2-セレノトルエン誘導体をいくつか合成した.これらの化合物について,Se-H間の二次元NMRの測定および動的NMR法による解析を行ったが,今のところC_-H…Se水素結合の存在を確認するに至っていない。今後は,もう少し分子内回転が束縛されたモデル系を検討する必要があることがわかった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Michio Iwaoka: "Structural Characterization of Areneselenenyl Chloride Stabilized by the Stereoelectronic Effect of an Intramoleular Nitrogen Atom." J. Org. Chem.60. 5299-5302 (1995)
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[Publications] Ken-ichi Fujita: "Asymmetric Intrandelular Selenoetherification and Selenolactonization Using an Optically Active Diary diselemide Derived from D-Mannitol." Tetrahedron Letter.36. 5219-5222 (1995)
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[Publications] Ken-ichi Fujita: "Asymmetric Methoxyseleneny lation of Olefins Using an Opticaliy Active Diary Diselenide Derived from D-Mannitol." J. Chem. Soc., Chem. Commun.1641-1642 (1995)
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[Publications] 岩岡道夫: "C-H結合がドナーとして作用する水素結合-新しいタイプの水素結合を発見した。" 現代化学. (発表予定). (1996)