1995 Fiscal Year Annual Research Report
バイメタリック系を用いた窒素分子と芳香族炭化水素の反応
Project/Area Number |
07855105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 洋一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40193263)
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Keywords | 窒素錯体 / アリール化 / バイメタリック系 / タングステン / ルテニウム / イソシアニド |
Research Abstract |
筆者は最近配位窒素分子と配位ハロアレーンの反応により窒素分子をアリール化するバイメタリック系の開発に成功している。本研究ではより高度なバイメタリック反応系を新たにデザインすることにより、配位窒素分子を芳香族炭化水素によってアリール化する反応の開発を目的として、以下の検討を行った。 まず、求核性が高いと考えられるアニオン性の窒素錯体[NBu_4][W(NCS)(N_2)(dppe)_2]を選び、求核試薬の付加を受けることが知られているベンゼン錯体[Cr(CO)_3(C_6H_6)],[RuCp(C_6H_6)][PF_6](1)との反応を試みたが、これらは反応性を示さず、また錯体1のシクロペンタジエニル配位子にさらに電子吸引性基を導入した[Ru(C_5H_2Me-PhCOOEt)(C_6H_6)][PF_6]との反応も検討したがやはりN-C結合の生成は認められなかった。 一方、アニオン性の窒素錯体[NBu_4][W(CN)(N_2)(dppe)_2]と[RuCp(C_6H_5F)][PF_6]との反応を検討したところ、シアノ配位子のアリール化が進行して新規なμ-イソシアニド錯体[WF{CN(C_6H_5)RuCp}(dppe)_2]が得られた。この錯体のX線構造解析ではイソシアニド配位子は従来にないイミノカルビン型の構造をとっており、フェニル基がルテニウムにη^5-配位していることが判明した。同様の錯体は種々の置換フルオロアレーン配位子をもつルテニウム錯体を用いても得られた。このようなイソシアニドの新しい配位様式は、electron richなタングステン中心とelectron deficientなルテニウム中心とにμ-配位することでイソシアニド配位子が特異な活性化を受けていると見なせるものであり、極めて興味深いと考えている。
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