1995 Fiscal Year Annual Research Report
下等動物食細胞における食作用の分子メカニズムの解析
Project/Area Number |
07857163
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安住 薫 北海道大学, 薬学部, 助手 (90221720)
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Keywords | 原索動物 / 食作用 / モノクローナル抗体 / 血球 / チロシンリン酸化 |
Research Abstract |
1.マボヤ血球の食作用と凝集反応を阻害するA74抗体が認識する血球膜抗原(A74蛋白質)の全構造を決定した。 A74蛋白質N末端部分アミノ酸配列をもとにプライマーを作製し、マボヤ血球cDNAライブラリーを鋳型にしてPCRを行った。得られた50bpのDNA断片をプローブとしてマボヤ血球cDNAライブラリーから、A74蛋白質をコードするcDNAのスクリーニングを行い、最もインサートの長い3.4Kbのクローンについて全塩基配列を決定した。A74蛋白質cDNAクローンは、全長3390bpでpolyAテイルを含み、722アミノ酸をコードする一回膜貫通型の蛋白質で、全体としては既知の蛋白質とのホモロジーはなく、新規の膜蛋白質であった。細胞外ドメインに5つNグルコシド型糖鎖のコンセンサス配列と5つのシステイン残基があり、また、細胞内ドメインには、チロシンリン酸化を介するシグナル伝達に働くと考えられるモチーフ(ARAMモチーフ、SH2/SH3ドメイン結合配列)が存在した。特にARAMモチーフは、哺乳動物のT細胞やB細胞の抗原レセプターに特徴的なモチーフで、本研究により、脊椎動物以外の血球で初めて見い出された。さらに、A74蛋白質がマボヤ血球の凝集に伴いチロシンリン酸化されること、A74抗体と共沈する90Kと75Kの蛋白質もチロシンリン酸化されていることから、ARAMモチーフを介した細胞内蛋白質のチロシンリン酸化による情報伝達系が、原索動物の血球にも存在することが明らかになり、高等動物の免疫担当細胞の進化を探る上で貴重な情報が得られた。 S-1B2抗体が認識するマボヤプラズマ中のCu-Zn型S0Dはマボヤ血球の食作用を促進することが明らかとなった。また、血球の非オプソニン依存性システムの食作用を阻害するRA5抗体が認識する抗原は、200Kの膜蛋白質である可能性が示唆された。
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[Publications] Hiroki Takahashi: "A novel membrane glycoprotein involved in ascidian hemocyte aggregation and phagocytosis." Eur.J.Biochem.233. 778-783 (1995)
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[Publications] 安住薫: ""休眠状態"の癌転移巣では、癌細胞の増殖とアポトーシスが同時におきる." ファルマシア. 9. 1039-1040 (1995)
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[Publications] K.Azumi: "Effect of plant lectins on cellular defense reactions of ascidian hemocytes" Experientia. (印刷中). (1996)
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[Publications] Benny P.Shum: "Unexpected β2-microglobulin sequence diversity in individual rainbow trout." Proc.Nat1.Acad.Sci.U.S.A.(印刷中). (1996)
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[Publications] 安住薫: "水産学シリーズ104水産動物の生体防御" (株)恒星社厚生閣, 129 (1995)