1995 Fiscal Year Annual Research Report
甲殻類の脱皮に伴うカルシウム代謝回転調節因子の探索
Project/Area Number |
07858067
|
Research Institution | Suntory Institute for Bioorganic Research |
Principal Investigator |
池田 みどり (財)サントリー生物有機科学研究所, その他部局等, 研究員 (60232203)
|
Keywords | アメリカザリガニ / 脱皮 / カルシウム / フォスファターゼ / X器官 |
Research Abstract |
1 脊椎動物では血清アルカリフォスファターゼ(ALP)が骨代謝マーカーであることを参考にして、アメリカザリガニの体液と皮下組織での脱リン酸化酵素活性の有無を調べた。 (1)ザリガニの眼柄を切除して強制的に脱皮周期を短縮した(約10日間)。経日的に体液及び皮下組織から粗酵素溶液を抽出した。市販のALP及び酸性フォスファターゼ(AP)活性測定キット(基質はp-ニトロフェニルフォスフェート)でアッセイを行った。その結果、共にALP,AP活性を認めた。(体液1ml当り,ALP: 0.5B-Lunit, AP: 1.0B-Lunit,皮下組織1匹当り,ALP: 7.5B-Lunit,AP: 15B-Lunit,以上0日目)脱皮前期(8〜10日目)には、体液中ではAPのみが(×2)皮下組織ではAP, ALP共に (AP: ×2.2,ALP: ×5.8)活性が増加した。この結果とザリガニの体液が常に弱酸性(pH6.2)であることから、甲殻類の脱皮に伴うカルシウム代謝にはAPが指標になることが示唆された。 (2)脱皮前期の皮下組織から抽出した粗酵素溶液に、脱皮ホルモンであるエクジステロイドのリン酸エステルを加えて酸性条件下で反応した。その結果、脱リン酸化反応が進行し、脱皮ホルモンを検出した。即ち、エクジステロイドリン酸エステルはAPの基質であることが明らかになった。APとカルシウムの直接的な、若しくはエクジステロイドを介する間接的な相関の研究が次の課題である。 2 眼柄内にAPを調節する物質の有無を調べた。眼柄から摘出したX器官サイナス腺の生理食塩水抽出物(分子量<3,000画分)を予め眼柄除去したザリガニに注射して、3時間後に体液を採集した。注射前後、両体液中のAP活性を調べた結果、注射後AP活性は3.5倍になった。この傾向は全脱皮周期を通じて認められた。ここに、X器官サイナス腺内にAP活性調節因子の存在を示すことができた。
|