2008 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞の分化全能性獲得過程におけるクロマチン修飾因子の作用機構解析
Project/Area Number |
07F07581
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小倉 淳郎 The Institute of Physical and Chemical Research, 遺伝工学基盤技術室, 室長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Jin Moon 独立行政法人理化学研究所, 遺伝工学基盤技術室, 外国人特別研究員
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Keywords | 生殖細胞 / ゲノム再プログラム化 / クロマチン修飾因子 / ヒストンアセチル化 / ヒストンメチル化 / 変異体ヒストン |
Research Abstract |
哺乳動物では一部の遺伝子の刷り込み(ゲノミック・インプリンティング)によって父親由来のゲノムと母親由来のゲノム間に機能的な差が存在することが知られている。このためゲノムが父親由来か母親由来かを記憶するインプリントメモリーは、生殖細胞が受精によって分化全能性を獲得する過程においても維持されなければならない。以前からインプリントメモリーの維持には制御領域のDNAメチル化が重要であることが知られているが、近年の報告によってアレル特異的なヒストン修飾の関与もあきらかになってきた。生殖補助医療による出生児において、Angelman症候群やBeckwith-Wiedermann症候群等のインプリンティング異常症の頻度が高いことが報告されていることや、個体におけるインプリント状態が受精直後に決定されることから、受精後なるべく早い段階でのDNAメチル化やアレル特異的ヒストン修飾を調節するクロマチン修飾因子の作用機構を解析する必要性が生じている。しかし、ヒストン修飾の解析に用いるクロマチン免疫沈降法が、一定数以上の細胞を必要としていたため、細胞数の少ない受精卵におけるアレル特異的ヒストン修飾の解析は困難とされてきた。そこで、前年度の研究結果によって確立された高感度クロマチン免疫沈降法を用いて、マウス系統間塩基配列多型が多く見られるC57BL/6系統とJF1系統マウスを掛け合わせて作成した受精卵の、インプリンティング調節領域におけるアレル特異的ヒストン修飾状態の解析を試みた。その結果、1)マウス受精卵のインプリンティング調節領域におけるヒストン修飾に、ゲノムの親由来による違いが存在すること、2)転写抑制的ヒストン修飾であるDimethylヒストンH3 lysine 9が、受精卵のインプリンティング調節領域においてゲノムの親由来の識別に関与していることを示唆する実験結果を得た。
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