2008 Fiscal Year Annual Research Report
ケニア野生生物保全におけるコミュニティ・アプローチの研究
Project/Area Number |
07J00114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
目黒 紀夫 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 野牟動物保全 / ケニア / アフリカ |
Research Abstract |
申請者は本年度の研究計画で、事例の追跡調査(2事例)、先行研究のレビュー、その他(研究成果の公表)、の3点を予定していた。 現地調査は、平成20年8月頭から平成21年1月末までの約6ヵ月間、ケニアにおいて行った。平成17年から調査を継続しているカジァド県キマナに関しては、(1)コミュニティ全体の野生動物保全に対する意見を把握するための質問票調査(約200世帯)、(2)コミュニティと外部者の協働体制構築の可能性を検討するための集会での参与観察、(3)以前から調査を継続している世帯への聞き取り調査、の3つを主に行った。(1)より、約8割の住民が「野生動物保全」に賛成といいつつも、そこでいう「保全」とは野生動物を国立公園内に閉じ込めて行われる「保全」であって、政府や国際NGOが意図する「保全」との間に隔たりがあることなどが確認できた。また、(2)より、地域住民が外部者に対して硬軟織り交ぜた交渉術を展開し、自らの主張を通していること、そうはいっても、実際の交渉の場では外部者に理屈で封じ込められる場面も少ないことが和かった。(3)は、引き続き、毎年の生業戦略を確認してきた。 平成19年度より調査を継続しているクワレ県クワレでは、(1)国立保護区周辺の異なるコミュニティにおいてキーパーソンを行い各地域で被害の実態が異なることを確認、(2)被害の程度が異なる地域では、野生動物保全に対する意見も異なることを確認した。また、(3)ローカルNGOへの聞き取りから、「環境保全」といった時に野生動物「環境」には含まれず、「保全」の対象としてではなく害獣駆除の対象として見られていることが判明した。 調査結果の一部は、8月にナイロビで開催された国際ワークショップで報告した。ワークショップの成果出版物に関しては、編者を務めるとともに3章を執筆した。また、このワークショップでの議論を踏まえて、投稿論文2本を現在投稿しており、内1本は掲載に向けた修正を終えている。
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