2009 Fiscal Year Annual Research Report
βアミロイドの病的コンホメーションを標的としたアルツハイマー病治療薬の設計
Project/Area Number |
07J00403
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 一馬 Kyoto University, 農学研究科, 助教
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 空間記憶学習 / 酸化ストレス / SOD / 老化 / ビタミンC / シリマリン |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)の原因物質である42残基のアミロイドβペプチド(Aβ42)は,凝集することによって神経細胞毒性を示す.本疾患の発症において重要と考えられるAβ42の「病的コンホマー」の形成は,Aβ42の22及び23番目におけるターンを介し,Aβ42自身がラジカル化することが引き金になるとされる.最近,22番目付近のターンに対する立体構造特異的抗体を用いた実験より,細胞内に病的コンホマーの存在を示唆するデータを得た.そこで本研究は,酸化ストレスに対する修復酵素の一つである細胞質スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の欠損マウスとADモデルマウスを交配させることによって,AD病態における病的コンホマーの役割をin vivoで明らかにするとともに,副作用の少ない抗酸化剤を探索することを目的として実験を行った.まず,二重変異マウスの脳内において,Aβの蓄積が酸化ストレスの増大とともに顕著に増大し,毒性本体とされるAβオリゴマー(準安定な凝集中間体)が早期に形成された.また空間記憶学習および習性に基づく行動の異常を示す時期も大幅に早くなった.興味深いことに,AD患者の剖検脳における細胞質SOD量は,対照群に比べて特異的に低下していた.一方,数種類の抗酸化剤を治療的にそれぞれ長期間投与したところ,ビタミンC及びマリアアザミ摘出物・シリマリンがADモデルマウスのAβ蓄積ならびに異常行動を緩和することが明らかになった。以上より,細胞質における抗酸化機能の低下が本疾患の発症に重要であることをin vivoで初めて実証するとともに,摂取が容易なビタミンC及びシリマリンによってAD症状を改善させることに成功した.
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