2008 Fiscal Year Annual Research Report
縁起・霊験譚の生成と作品制作の実態的研究-生活の中の信仰と生業の解明を通して-
Project/Area Number |
07J00948
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
日沖 敦子 Nanzan University, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中将姫 / 当麻曼荼羅 / 空念 / 髪繍 / 光世 / 彫刻 / 絵本・絵巻 / お伽草子 |
Research Abstract |
昨年度に続き、説話やお伽草子が生成される場と、そこに関わる信仰者の実態に注目しながら、本年度は、特に、文芸の基層にある信仰の在り方について具体的に検討することを試みてきた。まず、4月の説話・伝承学会大会において、藤原山蔭に関する新出の寺社縁起である「薬王寺縁起」に関する研究発表を行い、広く流布した藤原山蔭に関する伝承が、地域の寺社縁起のなかでどのように息づいているかについて検討した。また、6月の仏教文学会大会では、数年に亘り調査をすすめてきた髪繍当麻曼荼羅と制作に関与した聖空念に関する報告を行った(『MUSEUM』618号、2009年2月)。9月の仏教史学会では、仏教文学会で取りあげた聖空念の足跡を辿り、その活動の意義について検討した(『仏教史学研究』52巻1号、2009年10月刊行予定)。また、1月の説話・伝承学会例会では、空念と同じく、近世前期に活躍した埼玉県春日部市円福寺の僧侶光世の活動に注目し、殆ど類例を見ない彫刻の当麻曼荼羅とその曼荼羅を介しての民衆信仰の在り方について検討した(『説話・伝承学』18号、2010年3月刊行予定)。また、3月の奈良絵本・絵巻国際会議(Freer Gallery of Art・Washington D.C.)では、室町前期制作と推察される当麻曼荼羅(個人蔵)について報告した(『日本文学』673号、2009年7月刊行予定)。3月の国際会議での渡米にあわせて、現地の諸機関で絵巻・絵本の個人調査を実施した。その調査で得られた成果については、次年度の報告に向け、調べを進めている。また、7月には日本文学協会大会での報告を予定している。近世前期に制作された中将姫物語に関する掛幅絵について、寺院の所蔵資料をもとに読みとき、そうした掛幅絵を用いて民衆教化に努めた僧侶の活動の実態に迫りたいと考えている。
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