2008 Fiscal Year Annual Research Report
鉛系ペロブスカイト酸化物における相転移のフォノンダイナミクス
Project/Area Number |
07J01404
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
塚田 真也 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強誘電体 / ペロブスカイト / 結晶成長 / ブリルアン散乱 / ラマン散乱 / セントラルピーク / リラクサー |
Research Abstract |
強誘電性相転移は、双極子間の相互作用と熱揺動の競合により起こる。相転移温度で分極の動的揺らぎが大きくなり、圧電性等、種々の物性が非常に良好な特性を示す。特に鉛系ペロブスカイト酸化物は、他の強誘電体には見られない性質(巨大圧電定数や大きな自発分極)があり、なぜそのような特性が発現するのか機構はまだ明らかになっていない。これは、巨視的な性質が様々な周波数成分を持った揺らぎによるためであり、鉛を用いると系が複雑になっていることに起因すると予測される。そこで、本研究ではこの揺らぎをkHz〜THzの広い周波数領域で観測し、鉛系ペロブスカイト酸化物の相転移機構を明らかにすることを目的とする。 平成20年度は、3年間の実施機関の2年目にあたり、昨年度に大きな発展が見られた鉛系ペロブスカイトのリラクサー強誘電体0.93Pb(Zn_<1/3>Nb_<2/3>)O_3-0.07PbTiO_3について非弾性光散乱を中心に誘電率、放射光粉末回折、中性子非弾性散乱を測った。 音響フォノンからの光散乱(ブリルアン散乱)と分極の緩和現象による光散乱(セントラルピーク)の観測を様々な温度で行った。ブリルアン散乱の温度に対する振る舞いから歪の緩和に関する情報を、セントラルピークから分極の緩和に関する情報を得た。そして、それらを比べることにより分極緩和の機構を考察した。 ・リラクサー強誘電体における強誘電性相転移は、メゾスコピック構造(ポーラーナノリージョン)同士の双極子間相互作用により起こり、秩序・無秩序型の相転移に分類される。 ・相転移の際に遅くなる緩和は、ポーラーナノリージョンが180°と71°、109°の反転する過程である。 以上の考察は、Physical Review Bに掲載され、国際学会等、様々なところで高い評価を受けている。また、この結果を発表した学会において、若手対象の賞を2つ頂いた。
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Research Products
(10 results)