2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01929
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤岡 俊博 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | レヴィナス / 場所 / 倫理 / ローゼンツヴァイク / ジャベス |
Research Abstract |
本研究は、哲学者エマニュエル・レヴィナスの哲学を「場所」という概念を中心に読解する作業を一貫して行ってきたが、本年度は、一年度目に遂行した資料の調査を踏まえたうえで個別的主題に関する研究をさらに進め、レヴィナスの倫理が「場所」と「非場所」の錯綜的関係として構成されているという全体的見通しの獲得を目指した。とりわけ以下の諸点に関する研究を実施し、それぞれについての調査結果を論文等の形で公表した。 (1)フランスの詩人エドモン・ジャベスについてのレヴィナスのテクストを中心に、「場所」とその不在という主題がジャベスの作品において重要な役割を演じていること、そして「場所」を一つの主題とするレヴィナスのジャベス論が、詩作と「場所」との結びつきに関するマルティン・ハイデガーの思想を経由することでレヴィナスの二冊の主要著作(『全体性と無限』および『存在するとは別の仕方で』)を主題的に連結する機能を果たしていることを示した。 (2)50年代後半から60年代にいたるレヴィナスのハイデガー読解の焦点の一つである「異教」について、レヴィナスが用いるこの概念を思想史的に解明するために、レヴィナスの思想形成に決定的な影響を与えたフランツ・ローゼンツヴァイク『救済の星』とレヴィナスの思想との比較研究を行った。 (3)70年代のレヴィナスの主著『存在するとは別の仕方で』を中心に、レヴィナスの後期思想の一端を「非場所」の倫理として抽出する作業を行った。レヴィナスが提示する「記号」と「痕跡」の概念を手がかりとすることで、主体と「隣人」との倫理的「錯綜」という構造のうちに「非場所性」を読み取るとともに、当該研究課題に関するこれまでの研究を踏まえた総括的な視点を提示することを目指した。
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