2007 Fiscal Year Annual Research Report
相互協力形成の心理・社会的基盤:交換関係の連結に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
07J02155
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
真島 理恵 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 一般交換 / 利他行動 / 間接互恵性 |
Research Abstract |
なぜ人間は他者に協力することができるのかという問いは、古くから社会科学の最も重要なテーマの一つとされてきた。特に、個人が集団全体に対して協力する「個人-集団間交換」(例えば社会的ジレンマ)は、個人が個人に対して協力する「個人間交換」とは異なり、非協力者を交換から排除することが不可能な、解決困難な問題として知られている。本研究の目的は、これまで独立に行われてきた個人-集団間交換(社会的ジレンマ)研究と個人間交換(直接交換・個人間一般交換)研究の流れを統合し、単独では非協力者の排除が不可能な前者における相互協力が、後者との連結を通じて解決される仕組みを理論的に検討し、それを支える人間の心理的基盤を明らかにすることにある。 平成19度には、連結の基盤となる個人間交換のひとつである個人間一般交換の成立を可能とする条件についての理論モデルをまとめるとともに、それを支える心理的基盤を明らかにすることを焦点とする実験を行った。数理解析とコンピュータ・シミュレーションの結果から、個人間一般交換成立の理論的条件を特定するモデルを構築し、その成果を博士論文としてまとめた。理論的結論として、個人間一般交換の成立を可能とする鍵が、利己主義者のみならず利己主義者を助ける無条件利己主義者までも排除する非寛容な選別的利他主義にあることが明らかとなった。更に、そのような理論的結論と一貫する行動傾向を実際に人々が身につけているのか、またそのような選別的利他行動はいかなる心理的基盤に基づいて実装されているのかを調べる実験室実験を行った。実験の結果、人々が実際に理論的結論と合致する行動傾向を備えていることが明らかとなり、更には、理論研究が示した「非寛容な選別的利他主義」を人々に実装している心理的基盤が、他者を排除し罰しようという攻撃的意図ではなく、単純な利他的委とにあることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)