2007 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の古典的浸透圧調節ホルモンの消化管機能分化における作用への新たなアプローチ
Project/Area Number |
07J02156
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 英也 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 消化管 / 浸透圧調節 / 副腎皮質ホルモン / プロラクチン / アポトーシス / 細胞増殖 |
Research Abstract |
本研究は、魚類の浸透圧調節ホルモン、特に最近ミネラルコルチコイドの存在が示唆された副腎皮質ホルモンの作用を世界に先がけアップデートすることを目的としている。これまでに、魚類の浸透圧調節器官の一つである食道は、淡水中ではプロラクチン(PRL)とコルチゾルが細胞増殖を誘導し透過性の低い多層上皮となり、海水適応時にはコルチゾルがアポトーシスを誘導し透過性の高い単層上皮となることを主に個体レベルで見いだしている。 各ホルモンの役割を決定するため、広塩性魚でもあるメダカの食道の培養系を開発した。PRLを添加すると、その淡水適応作用を反映して細胞増殖が誘導されるという予備的な結果を得た。分裂細胞における受容体の存在からも、PRLが食道上皮に直接作用していると思われる。コルチゾルを添加すると、10nMでアポトーシスが誘導された。この効果は100nM以上で消えるが、逆に細胞増殖が惹起された。いずれの作用も魚類グルココルチコイド受容体(GR)のアンタゴニストによりブロックされ、"ミネラルコルチコイド"11-デオキシコルチコステロンの効果はみられない。受容体の分布からも、ミネラルコルチコイド系の関与はなく、コルチゾルがGRを介して低濃度で淡水適応に、高濃度で海水適応に寄与しており、コルチゾル濃度依存的なGRの標的遺伝子により双方向作用を示すと思われる。そこで、オリゴヌクレオチドアレイにより標的遺伝子の探索を行った。ホメオドメイン転写因子などの低濃度にのみ応答する分子、密着結合構成タンパク質など高濃度に特異的に応答するものが、11,000種からいずれも数十検出された。現在、real-timePCRによる再現性の確認、および未知のものの全長配列の決定などを行っている。以上のグルココルチコイドやPRLの細胞増殖/アポトーシス制御は、免疫、変態など広くみられ、普遍的な機能なのかもしれない。
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Research Products
(6 results)