2008 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本における田制の構造と財政運用の実態に関する研究
Project/Area Number |
07J02453
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小倉 真紀子 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本史 / 古代史 |
Research Abstract |
古代日本における国家財政の運用について、官人・官司に支給された公田及び公廨と呼ばれる官司運営経費の財源の実態を解明することを目指し、特に中央行政機関であった在京官司について重点的に研究を進めた。 国家行政の中枢機関である太政官には公田の賃貸借料(地子)、地方行政機関である国府には国司公廨田(養老令では職分田と改称)を充てることが田令で規定されているのに比べ、在京官司には公廨田が支給されず天平16年(744)に公廨銭が設置された。公廨銭の運用の実態を明確に示す史料は存在しないが、先行研究において、官司が銭貨を出挙(利付き貸付)によって運用する体制がこの頃に整ったと考えられていること、官司による銭貨出挙の実態を示す史料として月借銭解(下級官人への銭貨貸付文書)の分析がなされていることから、この月借銭解を手掛かりとすれば公廨銭運用の具体像がわかるのではないかと考えて検証を試みた。しかしながら、制度の導入に当たって日本が範とした中国・唐における公廨銭の運用方式と比較すると、月借銭の運用は確かに官司が行った銭貨運用の一端として捉えることはできるが、運用担当の下級官人が市肆で収益を上げて官司運営諸経費の財源に充てていた唐の公廨銭とは運用の目的・方法が異なるものと考えられること、また、後代の日本の文献史料に記されている公廨の運用方式(延喜雑式6諸司公廨条)とも一致しないように見られることから、月借銭解の分析によって在京官司の公廨銭の実態を解明することはできないのではないか、という結論に達した。その結果、国家財政の重要な基盤として機能した田制と、在京官司における運営財源の確保・運用のあり方との関係を追究する、という本研究課題の目的を達成するためには、太政官の公田(地子)及び国府の公廨稲と並んで設置された公廨銭よりも、やや時期が下ってから支給された諸司田に着目した方がよいのではないか、という見通しを得ることができた。
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