2007 Fiscal Year Annual Research Report
窒素循環に注目した地球温暖化に対する海洋生態系の応答メカニズムの解明
Project/Area Number |
07J02806
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 知里 (吉川 知里) Tokyo Institute of Technology, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海洋窒素循環 / 窒素同位体比 / 酸素同位体比 / 海洋生態系モデル / TSUBAME |
Research Abstract |
平成19年4月から9月までは、海水中の硝酸の窒素・酸素同位体比の測定方法を習得し、西部赤道太平洋の4つのサイトで採集された海水中の硝酸の窒素・酸素同位体比の測定を行った。その結果、硝酸の窒素同位体比は、深層で5‰前後の値を示し、表層に向かって上昇し、最も硝酸の枯渇しているサイトでは、最大約20‰の値を示した。また、硝酸の酸素同位体比は、深層で0‰前後の値を示し、表層に向かって上昇し、最も硝酸の枯渇しているサイトでは、最大約30‰の値を示した。通常、海洋内部の窒素循環のみが起こっている海域(深層からの硝酸の供給と植物プランクトンによる窒素の取り込みのみが起こっている海域)では、硝酸の窒素・酸素同位体比の比は1:1であるが、この海域では、硝酸の窒素同位体比が、酸素同位体比から期待される値よりも明らかに低い値を示した。これらの結果から、西部赤道太平洋の表層水中では、植物プランクトンによる窒素の取り込みとともに、海洋の外から(大気からの乾性・湿性沈着や河川流入)の窒素の供給が起こっていることが明らかになった。この成果は、地球史研究センター年報に発表した。 平成19年9月からは、メリーランド大学・教授のR.Hoodと助教のV.Colesとともに大西洋の窒素固定過程を含む海洋窒素循環モデルの開発を開始した。平成20年3月現在は、このモデルの東京工業大学のスーパーコンピューター(TSUBAME)への移植が完了し、大西洋で行われた生物生産量や栄養塩濃度などの海洋観測値や、衛星観測から得られた分布の再現に成功している。今後は、このモデルの改良の後、論文執筆を行う予定である。
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Research Products
(1 results)