2008 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体中で特有な金属イオン溶媒和クラスターの構造化学と分離分析への展開研究
Project/Area Number |
07J03963
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤井 健太 Saga University, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | イオン液体 / 液体構造 / ナノ不均一構造 / 分離分析 |
Research Abstract |
本年度は主に、イオン液体(IL)中で特異的に発現するナノ不均一構造の解明とこの不均一構造を利用する新規分離分析法に関する研究を行なった。(1)1-Alkyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)amide,CnmimTFSA(n:アルキル鎖長数),の液体構造におよぼすアルキル鎖長依存性について小角中性子散乱実験(SANS),高エネルギーX線散乱実験(HEXRS)およびMDを用いて調べた。アルキル鎖長,n=2〜12までのILに対してSANS実験を行なったところ、鎖長の増加とともにSANSピークが成長し、且つ、低Q側ヘシフトした。このことは、IL中でナノスケールレベルでの構造体が形成されていることを示唆している。このSANSピークの成分帰属を行うため、重水素化ILを独自に合成し、同位体置換法を適用したSANS実験を行なった。結果として、実測ピークはアニオン-アニオン間の長距離相関に対応することが明らかとなり、アルキル基の凝集による寄与は小さいことが分かった。このことは、MDにより理論的に検証され、計算結果から見積もった理論構造因子は実測値と良く一致した。さらに、HEXRS実験によりミクロ領域でのIL構造を評価したところ、イミダゾリウムカチオン周りには4つのTFSAが集合しクラスターを形成すること、このクラスター構造はアルキル鎖長に依存しないことが明らかとなった。 (2)CnmimBr/水混合系に対してSANS実験を行なったところ、n>8でナノレベルでのクラスター形成が確認された。このIL水溶液を用いてキャピラリー分離分析を行なったところ、他の充填剤等を必要とせず、水溶液を流すだけで高い分離能を得ることができた。従来の界面活性剤水溶液では種々溶質の分離は起こらなかったことから、IL系で特有の分離であることが示唆された。
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