2008 Fiscal Year Annual Research Report
運動軌道上で生成される情報次元数の少ない中間的物体表現に関する視覚・脳科学的検討
Project/Area Number |
07J04400
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日高 聡太 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 仮現運動 / 運動物体表象 / 奥行き情報 / 2.5次元 / 低空間周波数成分 / 時空間一貫性 / 可塑性 / 遡及的処理 |
Research Abstract |
空間的に離れた物体が適切な時間間隔で交互に提示されると運動が知覚される.仮現運動と呼ばれるこの現象では,物理的入力の存在しない運動軌道上に内的な物体表象が形成される.本研究では,運動軌道上の物体表象がどのような奥行き情報を保持するのか調べた.運動物体の消失位置に関する運動方向側への定位位置ずれ量(representational momentum;RM)に関して,物体同一性が維持されている時にはRM量が多くなるという特性を利用した.仮現運動する物体が凸図形の時,平らなプローブ物体が提示された条件で,凹の物体が提示された条件よりも位置ずれ量が多くなった.さらに,低空間周波数成分優位のぼけた凸図形を提示した条件では,凹図形を提示した条件よりもRM量が多くなった.このことから,仮現運動物体表象は,2次元と3次元との間の2.5次元の奥行き情報を持ち,低空間周波数成分優位の処理によって2.5次元の奥行き情報が実現されることが分かった. また,仮現運動表象がどのようにして時空間一貫性のある運動知覚を形成するのかを調べた.5点間の仮現運動系列のうち,第4,第5刺激の時空間的な順序が先行系列と逆行する事態では,逆行していない場面と同様,両刺激間で先行系列と一致した運動方向知覚が生じた.この現象は,第4刺激の色が他の刺激と必ず異なる事態や第4刺激の垂直位置がランダムに変化する事態,2刺激に先行する系列が1刺激(3点間運動)の事態で生じた.以上のことから,運動処理の比較的初期の段階で,可塑性のある運動表象生成過程が,遡及的に時空間一貫性のある運動方向知覚を生み出すことが分かった.
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