2008 Fiscal Year Annual Research Report
動学的貿易モデルをもちいた貿易と経済発展に関する理論分析
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07J05306
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩佐 和道 Kyoto University, 特定助教
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Keywords | 動学的貿易モデル / 内生的時間選好 / 間接ネットワーク効果 / ギッフェン財 |
Research Abstract |
これまで研究を行ってきたギッフェン性を示す効用関数に関する論文が、Economic Theoryに掲載されることが決まった。この論文では劣等財に対する支出が非常に少ない場合でも、その財がギッフェン財となり得ることを示しており、これまでの直感的な解釈から導かれる結論とは大きく異なるギッフェン財が存在する可能性を示している。 動学的貿易モデルの研究においては、これまで行ってきた非ホモセティックな効用関数を用いた分析に加えて、内生的時間選好を導入した動学的貿易モデルの分析も行った。The International Economyに掲載された論文では、1家計当たりの労働供給量が等しい場合には、初期時点の要素賦存比率に関わらず、定常均衡では産業間貿易は起こらず差別化財の産業内貿易のみが発生し、その際に家計数の大きな国がより多くの種類の差別化財を生産するようになるということを示している。この結果は、例えば人口の多い発展途上国が、先進国の1人あたり資本量と等しいだけの資本を長期的に蓄積した場合、発展途上国が先進国よりも多種類の差別化財を生産するようになるということを意味している。 間接ネットワーク効果に関する研究、論文「Indirect network effects and the impact of trade liberalization:A note」等では、2種類のハードとハードの選好に関して異質な消費者が存在すると仮定したもとで、貿易自由化(あるいは輸送費の減少)に伴うソフトの(実質的な)バラエティー数の増加が家計の厚生に及ぼす影響を考察している。そして間接ネットワーク効果が働くもとでは、貿易自由化が一方のハードへの標準化を促進し、結果としてバラエティー数の増加にも関わらず、自らの嗜好に近いハードが無くなる事で厚生が悪化する消費者が存在する可能性を示している。
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