2007 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯収束帯周辺の大気循環と輸送混合過程に関する研究〜層状構造の果たす役割〜
Project/Area Number |
07J05787
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 成徳 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 対流圏 / 東部太平洋赤道域 / 湿潤層状構造 / 年々変動 / 季節変化 |
Research Abstract |
年次計画に従い、平成19年度は「熱帯対流圏中層に見られる湿潤層状構造の統計的性質」を調べた。まず年々変動の有無、性質を調べることを目的として1999年から2006年までの9月に関して東部太平洋赤道域において領域大気モデルによる数値計算を行い、モデルの中での湿潤層状構造の出現頻度を調べた。その結果大きな年々変動が見られた。特にエルニーニョ・ラニーニャの指標との関連が認められた。ラニーニャ寄りの年に層状構造が多く、エルニーニョ寄りの年には層状構造が少ない傾向が見られた。次に、季節変化について調べるために2005年と2006年に関して通年の計算を行った。その結果、湿潤層状構造は北半球の冬に多く見られる傾向があった。この変動の傾向は積雲活動の変動傾向と関連が見られた。つまり、対流の不活発な場所・時期に多くの湿潤層状構造がみられる。さらに、北半球夏季には熱帯収束帯の南側において特定の高度(高度5km,10km,16km)に集中して出現する傾向が見られた。対流域との関連の理由としては対流により大気が混合されることにより、対流活発域で層状構造が維持されにくいと言うことが考えられる。このことは熱帯収束帯の位置と強度の季節変化と整合的である。特定の高度に多く発生する理由として、対流不活発域において熱帯大気の子午面循環の多層性によって湿潤空気と乾燥空気が接する高度が出来ることにより層状構造の形成が促進される特定の領域が存在することが考えられる。このことを考慮すると熱帯収束帯の北と南での非対称性についても説明可能である。以上のように「層状構造の空間的・時間的頻度分布を明らかにする」という目的に関しては、東部太平洋赤道域においてはおよそ達成されたと考える。
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