2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J06059
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 晋之介 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 貝形虫 / 石灰化 / 外骨格 / 節足動物 / 脱皮 / 筋肉痕 / 形態形成 / TEM |
Research Abstract |
今年度に行ったバルト海の試料採取にて大量に得られたLeptocythere psamophillaを主な素材として,ポドコーパ目貝形虫類に発達する「石灰質折り返し構造」の形態観察を行った.ポドコーパ目貝形虫は,動物体を完全に包み込む二枚殻の背甲を持っており,その縁辺部のクチクラ層は内側に折り返って,キチン質の表皮へと連続する.折り返し部分のクチクラ層は強く石灰化しており,この部位は「石灰質折り返し構造」と呼ばれ,成体でのみ顕著に発達している.そこには分岐した毛細管(radial pore canal)や前庭(vestibule)といった分類学的・解剖学的に重要な形質が存在している.脱皮後の個体を大量に集め,本分類群の折り返し構造の石灰化の様子を詳細に追跡することで,前庭と毛細管分岐パターンの形成過程を明らかにした.貝形虫類の背甲は脱皮直後に石灰化を開始するが,最終脱皮直後における石灰質折り返し構造の発達具合は,幼体のそれと同等であることが確認できた.成体にのみ発達する幅広い石灰質折り返し構造は,脱皮から50時間ほど経過してようやく石灰化か始まり,その石灰化はクチクラ層の表面から内側へと進行する.これらの観察結果から,脱皮直後において成体の背甲は,幼体と全く同じ様式で石灰化が行われるが,さらに時間が経過すると,縁辺部の折り返し部分が石灰化を開始することが示唆された.すなわち,ポドコーパ目貝形虫の成体において,背甲クチクラ層の石灰化は2つの段階を経て進行することが明らかになった. また,ドイツ・ハンブルグ大学の動物学研究所・博物館にて習得した技術による新たなデータと,前年度から蓄積していたデータを基に,節足動物の外骨格筋肉付着構造に関する論文を完成させた.当論文は,日本古生物学会英文誌(ISI登録雑誌)「Paleontological Research」に受理された
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