2007 Fiscal Year Annual Research Report
アリヅカコオロギ類における化学擬態システムの進化と寄主特異性
Project/Area Number |
07J06495
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小松 貴 Shinshu University, 理学部, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アリヅカコオロギ属 / 寄主特異性 / ミトコンドリアDNA / 化学擬態 / 分子系統樹 / 盗食寄生 / 体表炭化水素 / アリ |
Research Abstract |
日本国内では、九州・四国・南西諸島にてアリヅカコオロギ属のサンプリングを行い、トータル500個体以上のサンプルを分子系統解析及び飼育観期に採集した。海外では、マレー半島とタイにてアリヅカオロギ属のサンプリングを行い、トータル300個体のサンプルを分子系統解析用に採集した。 分子系統解析は得られたサンプルの中から10形態209サンプルを用いてDNA抽出し、ミトコンドリアDNA(16srRNA)により分子系統樹を作成し、得られた系統樹上に野外での生態情報を反映させた。その結果内群は大きく16系統に分岐し、旧北区(九州以北の日本の種)グループと東洋区(南西諸島と東南アジアの種)グループに分かれた。単一アリ種のみに寄生するスペシャリスト系統は温帯・熱帯それぞれにおいて複数回出現していた。一方複数種のアリを利用するジェネラリスト系統は、熱帯産ほど温帯産より寄主範囲がより広くなる傾向が見られた。熱帯に生息するアリヅカコオロギの中で唯一スペシャリストとして認められたシロオビアリヅカは、熱帯の撹乱地に優占して生息するアシナガキアリと親密な関係を持っていた。このコオロギのアシナガキアリに対する依存度を検証するために、飼育実験ならびに体表科学物質の分析を行った。比較として、ジェネラリストのミナミアリヅカを用いた。結果スペシャリストはジェネラリストと異なりアリ不在環境では短期間で死亡することや行動生態的な特化、対アシナガキリア用の巣仲間認識物質を自分の体表で生合成している可能性が示唆された。従来、種数が少ない上にただアリから餌を奪うだけと考えられていたこの分類群内で、様々な種(系統)が認められただけでなく、行動生態的にも多岐に及んでいるという事実は、アリヅカコオロギ属が寄主・寄生者相互作用進化を研究する上で優れたモデル生物である事を裏付けるものである。
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Research Products
(2 results)