2007 Fiscal Year Annual Research Report
更新世末における人類の行動パターンとその領域に関する研究
Project/Area Number |
07J07139
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
芝 康次郎 Kumamoto University, 大学院・社会文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細石刃石器群 / 九州 / 石器石材利用 / 石器使用痕分析 / 行動パターン / 行動領域 |
Research Abstract |
本研究における研究目標は、更新世末における人々の行動形態を明らかにすることである。具体的には、九州における細石刃石器群を対象とした石器群構造論分析の蓄積が急務である。初年度に行った分析は以下のようなものである。(1)南西部地域における石器群の分析、(2)中九州東部における石器群の分析、さらには、(3)縄文時代草創期に位置付けられる石器群の分析である。 まず(1)の分析おいては、南九州にあって北部九州産の石材が多用される石器群における細石刃製作技術の詳細を明らかにした。そこでは、北部九州的な石材利用とは対称的に南九州の石器群と共通した技術が見出された。(2)においては、東九州に偏在する石材を多用する石器製作が行われる一方で、広域分布する黒曜石製石器のあり方から、中九州西部の石器群との関連性が窺われた。(3)の分析では、細石刃石器群と爪形文土器とが、近接して出土した遺物群を対象とした。石器群は、それまで西北九州産石材が多用されていた中九州にありながら、在地産石材が利用されるという点で特徴的である。石材構成やその搬入形態から見て、行動領域の範囲が径20km前後と考えられた。これらの分析から、石材消費からみて、時空間的な行動領域あるいはパターンの変化が認められることが明らかとなった。 以上に加えて行ったのが、九州における細石刃石器群の編年的考察である。九州の細石刃石器群を従来とは異なる技術型式学的な枠組みの中で捉え、前半と後半とに2期区分した。この時間的区分と空間的な集団の行動パターンとを総合化し、九州の旧石器時代から縄文時代にいたる集団の行動パターンの変化を捉えた。そこでは、前半期における画一性の高い技術とコアリダクション型の石材消費戦略に支えられた長距離移動型の行動パターンから、後半期における製作コストの抑えられた柔軟な石器製作とネットワーク化された遺跡間関係へという変化が導き出された。
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