2007 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域における貧酸素水塊が水生生物の再生産および加入過程に及ぼす影響
Project/Area Number |
07J08193
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
児玉 圭太 National Institute for Environmental Studies, 環境リスク研究センター, 特別研究員(PD) (90391101)
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Keywords | 東京湾 / 貧酸素水塊 / 群集 / 個体群 / 再生産 / 初期生活史 / 底生生物 |
Research Abstract |
貧酸素水塊が水生生物の再生産および生活史初期の加入過程に及ぼす影響を明らかにするため、東京湾におけるフィールド調査を行い、サンプルの解析を実施した。なお、本研究は、(独)国立環境研究所環境リスク研究センターによる、環境リスク研究プログラム:中核研究プロジェクト4サブテーマ(1)「東京湾における底棲魚介類の個体群動態の解明と生態影響評価(堀口敏宏主席研究員)」と密接な連携をとりながら実施され、より精細な生態学的知見を得るため、同サブテーマによるサンプルもあわせて解析した。 2005年に年4回実施した東京湾全域における生物環境調査(東京湾20定点調査)のデータを用い、水質項目の季節変化および底棲魚介類の空間分布を明らかにし、両者の関係を多変量解析により探索した。底棲魚介類の種数、個体数、重量および多様度指数は、2月から5月に高く8月に低下した。2月と5月には湾全域に生物が出現したが、8月には、貧酸素水塊が形成される湾北部において無生物域がみとめられた。10月には湾北部の生物相は回復したが、湾南部に比べ種数および個体数・重量ともに少なかった。多変量解析による水域区分の結果、湾の南北で種組成および個体数・重量が異なることが明らかとなった。湾北部に出現する種は、主として遊泳力のある魚類や、貧酸素に比較的耐性のある二枚貝類であった。生物の空間分布に影響する環境因子について、BIO-ENV解析により、生物データと同様のエリア区分が得られるような環境データの組み合わせを探索した。また、CART解析により、生物が存在する底層酸素濃度の閾値を推定した。BIO-ENV解析の結果、生物と同様の空間分布を示す環境因子として、8月においては底層DO、10月には底層塩分、底層DO、水深が抽出された。CART解析の結果、生物が存在する底層DO濃度の閾値は、8月には1.7mL/L、10月には1.2mL/Lと推定された。 2006年4月から2007年3月にかけて毎月1回、東京湾全域に設定した10定点において採集した、CTDデータ、水および泥の試料、マクロベントスおよびハタタテヌメリの仔稚魚と成魚について、データ・サンプル処理および解析を実施した。底泥試料について粒度組成解析を行った結果、湾南東部は砂質、それ以外の水域は泥質であった。有機物量の指標である強熱減量を測定した結果、湾北西部において高く、湾南部にむかうにつれ低下する傾向が明らかになった。貧酸素水塊は、5月から強熱減量の高い湾北西部から出現し、8月には湾南部を除く水域全体に拡がった。9月には面積規模は縮小したが、湾奥部では11月まで継続的に出現した。マクロベントスの種数および個体数密度は湾南部で1年を通して高かった。湾奥〜中央部では種組成は単調であり、また個体数密度は貧酸素水塊の影響により夏から秋にかけて減少し、特に8月と9月には無生物域が確誌された。ハタタテヌメリの空間分布の季節変化を調査した結果、マクロベントスと同様、夏から秋にかけて湾奥〜中央部における個体数密度の著しい減少がみられた。体長組成解析による成長推定を行った。また、卵巣の組織学的観察を行い、雌の成熟体長および産卵期の推定を行った。1990年代と資源量水準が低下した近年の結果を比較したところ、個体群の平均体長および、最小成熟体長の低下がみとめられた。産卵期は春から秋にかけてであったが、当歳の着底個体は貧酸素水塊が縮小・解消する11月以降に出現した。この着底個体は夏(8月頃)の産卵に由来するものと推測され、春産卵由来の着底が生じていない可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)