2007 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の安定性と変動性に関する発達認知神経科学的研究
Project/Area Number |
07J08440
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
橋本 照男 Keio University, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 記憶 / 安定性 / 揺らぎ / 神経メカニズム / fMRI / 再認 |
Research Abstract |
記憶の安定性と不安定性の神経メカニズムを解明するため、fMRIを用いて繰り返し再認課題を行った。その結果、学習時の処理が後の想起の安定性に大きな影響を与えるということが確認できたと同時に、想起を繰り返すことで、不十分な学習しかされていない場合でも想起できることが示された。また、それに対応する神経機構として、学習時には意味処理に関わる左前頭部と側頭-頭頂部の活動が後の想起の安定性に関わっており、左頭頂間溝の活動は不十分な学習もしくは学習の失敗に関わっていた。想起時の活動からは、右下頭頂葉が正確な想起に、後部帯状皮質の活動の低下が検索努力や構成的な想起に関わっていることが示唆された。 この後部帯状皮質は加齢とともに代謝が低下することが知られており、アルツハイマー病患者ではさらに低下する。これらから、この部位の活動が記憶機能の低下との関連が推測され、加齢や疾病に関わらず、若年健常者でもこの部位を制御できることが記憶を安定化させることには重要であると考えられる。よって、例えば高齢者が多く経験する「ど忘れ」などは若年者と同じ機序であると推察され、加齢による記憶機能の低下をより発達的視点を持って捉えることができると考えられる。 現在進行中の研究では、再認課題ではなく再生課題、つまりより思い出すのが困難な状況、且つ日常的な状況における想起の安定性の神経メカニズムの解明を目指している。fMRI撮像中に再生をさせる、つまり喋ってもらうということは、技術的に困難が伴うが、これを克服し、データの収集と解析、そしてその取りまとめを行う計画である。
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Research Products
(6 results)