2007 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホールを含む大環状化合物に関する研究:諸物性の解明及び触媒反応への利用
Project/Area Number |
07J08618
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中渕 敬士 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ボスホール / カリックスフィリン / 大環状ボスフィン配位子 / 触媒 / 核置換ポルフィリン / 芳香族性 / 拡張ポルフィリン / リン上の化学修飾 |
Research Abstract |
平成19年度研究成果の概要を以下に記載する。 1.ポルフィリンとカリックスピロールが融合したカリックスフィリン骨格(5,10-ポルホジメテン型)に対してホスホール環を導入し、ピロールおよびその他の複素環とともにハイブリッド化させることで、様々な新しいタイプの大環状ホスフィン配位子の構築を行った。これらのハイブリッド型カリックスフィリンは、柔軟な部位と剛直な部位を併せ持つという特徴を有しており、また、その配位能は複素環の組み合わせにより様々に制御することが可能である。実際、これらのパラジウムおよびロジウム錯体が、それぞれHeck反応およびヒドロシリル化反応の触媒として作用すること、また、その触媒活性や選択性が複素環の組み合わせにより大きく異なることが明らかとなった。これは、今後ボスホールを含むハイブリッド型カリックスフィリンを触媒反応へと応用していく上での重要な知見である。 2.ポルフィリンの一つの窒素原子をリン原子で置換した構造を持つ21-ホスファポルフィリンの合成に初めて成功し、その構造、芳香族性、および光・電気化学的特性を明らかにした。21-ホスファポルフィリンは明確な芳香族性を示し、また、通常のポルフィリンよりも狭いHOMO-LUMOギャップを有している。興味深いことに、21-ホスファポルフィリンは溶液中でリン上のオキソ化を受け、同時に、β位に縮環したトリメチレン部位へと共役系が拡張されることで、22π構造を持つ21-(オキシ)ホスファポルフィリンへと変換されることが明らかとなった。ホスファポルフィリンの化学を追求していく上で、その最も基本的な骨格である21-ホスファポルフィリンの合成に成功し、その物性を解明した意義は大きい。また、今回みられたコア原子(リン)上の化学修飾に伴うポルフィリンπ系の変化は、従来の核置換ポルフィリンにはみられず、ホスファポルフィリンに特有の現象であると考えられる。今後、このような特性を活かした化学の展開が期待される。
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