2008 Fiscal Year Annual Research Report
高反応性活性種を用いた不安定炭素カチオンの発生と反応のインテグレーション
Project/Area Number |
07J09093
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 浩一 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電解酸化 / 有機イオウカチオン / ジアリールジスルフィド / 炭素カチオン / チオアセタール / チオクロマン / カチオン連鎖機構 / 環化反応 |
Research Abstract |
炭素カチオンは多種多様な有機反応に関わる重要な活性種であり、これまでに膨大な研究が報告されている。本研究の目的は、これまでの研究では不可能であった不安定かつ高反応性炭素カチオン種の発生と反応を高度に制御することにより、従来には不可能であった有機反応の集積化(インテグレーション)を実現することにある。我々はすでに、チオアセタールとArSSArの低温電解酸化により調製した有機イオウカチオン種ArS(ArSSAr)+を反応させることで、迅速にアルコキシカルベニウムイオンを発生・蓄積できることを見出している(インダイレクト・カチオンプール法)。我々は最近、このインダイレクト・カチオンプール法により蓄えたアルコキシカルベニウムイオンのプールに対して、さまざまな炭素求核剤の検討をしていた際に、炭素求核剤としてスチルベン誘導体を作用させた場合に、チオクロマン骨格を有する複素環化合物群が効率よく得られることを見出した。また、高速カチオン反応のインテグレーションのひとつの試みとして分子内にオレフィン部位を2個有するジエンとArSSArの付加・環化反応が、低温電解酸化により調製した触媒量のArS(ArSSAr)+により効率よく開始されることを見出した。ArSSArの電解酸化により発生・蓄積した触媒量(20mol%)のArS(ArSSAr)+を、同一分子内にアルケン部位を2個有する1,6-ジエン類に作用させた。様々な条件の検討を行ったところ、ジエンに対して、ArS基が2個導入された環化生成物が高立体選択的に得られることを見出した。この結果は、本反応がArS+をチェイン・キャリアとするカチオン連鎖機構で進行していることを示しており、新しい様式のカチオン反応としても注目される。
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